玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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国を象徴するもの

▼手作り味噌を頂いた。味噌汁と手羽先の甘辛味噌煮込みを食べる。美味し。味噌は値段は安いものの仕込むのは半年から1年もかかるんですね。ありがたいもの。味噌を使った料理は何があるのだろう。

 

 

 

▼早いもので一月終盤。二月四日からは北京で冬季オリンピックが始まる。今年度はオリンピックが2度あるのだな。歴史上こんなことはなかったかもしれない。調べてないから知らんけど。

 

開会式がどういった内容になるのか少し期待している。今までだと開会式も最初だけは観るが、飽きたらすぐに観るのをやめていた。でも、今回はちょっと観てみようかなと思う。それというのも先日、幕末の工芸品についての番組を観た。日本は幕末まで鎖国しており、ペリーに圧力をかけられて1854年日米和親条約を締結する。その後、イギリス、ロシア、オランダとも同様の条約を結び、200年以上続いた鎖国は終わりを迎える。しかし、国内では外国人を排斥しようという攘夷熱が高まっていた。

 

その国内事情を海外に説明し、開港(新潟・兵庫)開市(江戸・大阪)を延期させるために、ヨーロッパに竹内下野守を正使とした36名からなる文久遣欧使節が送られる。これには福沢諭吉も加わった。文久遣欧使節が相手方との交渉の際におくった箪笥が放送されていた。それがどこの誰というのが全部忘れてしまった。検索しても出てこない。イギリス、フランス、オランダ、プロイセン、ロシアのどこかなんだけど。

 

欧米列強にとっては切り取り放題の時代で、武力で侵略して植民地を増やす競争が続いていた。侮られると何をされるかわからない。長崎などで部分的に貿易は行われていたものの、まだ日本がどんな国か、欧米諸国ははかりかねている。国内では攘夷派が躍動していたため、今、国内に外国人がどっと入ってくると何が起こるかわからない。そのために幕府としては少しでも開港を遅らせたかった。また、最終的に外国と戦うことになるにせよ、少しでも時間を稼ぎたいという思惑もあっただろう。そのために文久遣欧使節の交渉は何がなんでも成功させねばならなかった。

 

交渉の際、相手方には源氏物語のいくつかの場面が描かれた漆塗りの箪笥が贈られている。あえて人物は描かず、背景や小道具を描くことで作品の場面を連想させる「留守模様」という技法がとられている。知っている人が見れば、その絵から源氏物語のどの場面かがわかるという。当然、外国人には源氏物語はわからない。その上、見る人が見ればわかる留守模様なのだから二重にわからない。もう少しわかりやすく、外国人受けしそうなものをとも考えられるがそうはしなかった。

 

この贈り物は、ただの贈り物ではない。交渉の行方が日本の将来を左右する。日本という国をヨーロッパ諸国に上手に伝え、文化的に侮られず、高度な技術も示さなければならない。それでこの箪笥が選ばれたことになる。物というのはなんでもそうですが、見る人が見ればわかる、という物がある。この箪笥は表面には源氏物語の留守模様が描かれているため、わかる人にだけ意味がわかる作りになっている。でも、それだけではない。箪笥は仏壇のような観音開きになっており、源氏物語の留守模様が描かれた扉をあけると、蝶が乱舞する様子が描かれた抽斗があらわれる。観音開きの内側にも蝶が描かれ、とても華やかな作りになっている。

 

わかる人が見れば源氏物語のそれぞれの場面に思いを馳せ、わからない人が見ても、丹念に描かれた留守模様や華やかに舞う蝶を楽しめるようになっている。本当にすごい物は、どんな人が見てもすごいのかもしれない。確かな技術と美意識は必ず伝わるという自信と気概を感じさせる。贈り物の効果がどれほどあったかは不明だが、ロシアとの交渉は不調に終わったもののイギリス、オランダ、プロイセン、フランスと覚書をかわすに至った。

 

オリンピックの開会式というのも、外国に開催国のことを知ってもらう場なのだろう。現代ならば、日本を象徴するもの、名物となると何が選ばれるのだろう。お台場に飾ってあるガンダムのような巨大ロボ、富士山、アニメ、ゲーム、寿司、災害のときに行儀よく配給の列に並ぶ人々、風光明媚な自然。いろいろあるがピンとこない。自信をもって「これ」と出せるものはあるのかな。東京オリンピックでは、ワカメダンスとか、テレビ局のコントとか、なんだかわからない演出もあった。あまりに考えすぎて頭が変になったのか。たしかに難しいんですよね。北京ではどんなものを見せてくれるのだろう。

 

 

 

▼映画の感想『CODE8/コード・エイト』『おらおらでひとりいぐも』を書きました。『CODE8』はディストピア的雰囲気がただよう超能力SF。お好きな方はお好きな感じ。『おらおらで』はおばあちゃんのコメディ。うーむ、あんまり楽しくない老後が流行っているのだろうか。