玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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順送り

▼胴体部分が真っ赤で、蓋が黄色の箱を使っている。パソコンの増設などに使う工具が入っている。「カズレーザーの箱とって」で通じるので便利。最近は「カズレーザー貸して」といわれるようになった。仕方なく私のカズを貸している。私だけのカズを。

 

そしてゴールデンウィークが始まった。

 

 

▼図書館へ。自分で本を選んでいるとどうしても似た本ばかり選んでしまう。新しい著者の本を読んでみたいとき、今まで読んできた本の中で触れられているものを読むことが多かった。でも、それは今読んでいる本の著者から別の著者を紹介してもらうようなもので、ハズレは少ないものの、まったく新しい何かということにはならない。

 

考えた結果、とりあえず目に入ったものを借りて、嫌でもなんでも読んでみるという。この方法は本当に新しい本と出会えるのがいい。ただし、だいたいハズレを引く。

 

 

▼24時間くんと営業のEさんが派手に揉めたという話をきく。営業のEさんという人は人を不快にさせるような軽口を叩くことがあって、前に隣席のTさんとも揉めていた。Tさんが「あいつと二度と口ききたくない」と怒っていたので、AIに「怒りをしずめる方法を教えて」と訊いたところ、いくつか案を出してくれた。怒り狂っているTさんに「ヨガやるといいんだって!」と伝えたら「会社でヨガやんのかよ! 頭おかしいんですか!?」と怒られたのを思い出した。ちょっと和ませようとしただけなんです。AIのやつが全部悪い。

 

新人の頃、違う部署の人と派手に揉めたことがあった。翌日、先輩がその人と私の和解の場を設けてくれた。ありがたかった。私はそのとき先輩にきちんとお礼をいっただろうか。記憶にないのだ。先輩、上司、同僚など、助けてもらってもなかなか恩を返すことができない。

 

今回は、営業のEさんと24時間くんに声を掛けてご飯に行った。私がした失敗も、こうやって次に繋ぐことで活かされるのではないか。自分がしてもらったことを本人に返せなくても、違う人に返していけばいい。きっとこういうことは順送りになっている。一日経って二人とも冷静になっており、自然と和解できたようだった。

 

話題は代わり、業務部のKさんの話になった。私は今月、彼女の仕事を3回肩代わりしていた。Kさんはシングルマザーとして働いており、保育園に通う子供の体が弱いらしく、突然仕事に穴を開けることがあった。私はまったく気にしていなかったが、申し訳なく思ったのかKさんはお詫びにとお菓子を買ってきてくれた。私の態度がそっけなく、ひょっとしたら怒っていると思ったのかもしれない。かえって申し訳なく思ったし、またこういったことをされても困る。お菓子はもらえないし、この場で開けてみんなで食べてもらうしかなかった。

 

私は以前、家族が入院していたとき、ずいぶんと上司や同僚に迷惑をかけた。病人の容態が急変すれば病院にかけつけなければならないこともある。病院に3か月ぐらい入院していると、次の転院先を勧められ、移らなければならなくなる。転院先探しは難航するし、病院との話し合いで仕事を休まなければならなくなる。そういったときも上司や同僚は励ましこそすれ、嫌な顔ひとつしなかった。私が引継ぎ処理をしようとすると、上司に「グズグズしてないでさっさと行け」と叱られた。私にはその恩がある。なんのお返しもできなかったけれど。だから私にはKさんからお礼をいわれるようなことはない。むしろ気兼ねなく休んでほしい。自分だけは大丈夫と思っていても、誰がどうなるか、何が起きるかなんてわからない。どうしようもない事情で休むことは誰の身にも起きる可能性がある。そういうことになれば助け合っていくしかない。でも、私はこういった話をKさんにしたくなかった。話せば当時のことを思い出すし、少しだけ悲しい気分になる。Kさんの仕事を代わるとき、彼女が負担に感じないよう淡々と振舞ったつもりだが、それが彼女の目にはそっけなく映ったのかもしれない。子供は地域社会で協力して育てていくとか、そういった立派な考えがあるわけではない。もちろんみんながそう思えばいいとは思うけれど。ただ、私は私がしてもらったことを返しているだけなのだ。

 

Eさんは私に「最近、Kさんの仕事よく代わってあげてるじゃない。Kさんてエロいよなあ。親切にしてたら一発ぐらいやらしてくれるかもよ」といった。Eさんにとって、人に親切にすることは下心を含んで当然という認識があるのか、それともあまり考えずに軽口を叩いたのか、どちらかはわからないがそういうふうに見られていたことに驚いた。怒るというか唖然としてしまった。しばらくすると、ちょっと頭にきてたのか、そこからEさんに対して一言も口をきかなくなった。

 

あとで24時間くんから「しゅんさん(私のこと)がまったく喋らないっていう小学生ムーブするから、変な空気になって大変でしたよ~。」などといわれた。誰が小学生ムーブだ。小学生なら取っ組み合いになってるだろうが。ふてくされて無言は反抗期の中学生ムーブです。24時間くんは間を埋めるために饒舌になってがんばっていた。私は変な空気になろうと一切気にしませんので。

 

席に戻ると、隣席のTさんが「うまくいきました?」と訊いてくる。24時間くんとEさんの和解自体はうまくいったものの、そのあとの会話で変な感じになったことをいうとみょうに喜んでいた。なぜそんなに嬉しがりますか。「ほらEさん、腹立つでしょ?」といわれる。とりあえず、銃を売ってくれる人を紹介してほしい。Tさんは「頭にきたらヨガやるといいですよ」と笑った。ヨガなんてやってられるかアホか。あなた、あのときのことまだ根に持っていましたか。

 

 

▼サバイバルゲーム『ARK: Survival Evolved』をやり続けている。レベル150のプテラノドン、バリオニクス、TEKティラノをテイムして絶好調だが、もっとも嬉しかったのはカワウソをテイムしたとき。レベル1で体力もなく、使うのも不安な状態。正直、役に立つかは怪しい。

頭装備だけできるので皮帽子をかぶらせた。か、かわええ……。もうどこにも行くな。

 

ARKはつまるところ生産力のゲームなのかもしれない。原油と金属を大量に生産できれば飛躍的に豊かになっていく。資源の生産効率を高める工夫が面白いのかな。あとカワウソがかわええ。トビネズミもかわええ。