玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

このブログの内容はすべてフィクションです

奇人の涙

▼ざっくり切った長ネギと豚肉を炒めて味付けは塩コショウだけ。以前、嵐山光三郎のエッセイに載っていた気がする。簡単だが美味しい。やや焦げた長ネギを頬張ると、口の中で熱々の芯がピュッと飛び出す。おいし。ほほほ。

 

サッカーアジアカップ 日本×イラク戦を観る。接戦は面白いな。イラクの選手はフィジカルが強い。日本は再三セットプレイの機会がありながら、なかなか得点に結びつかなかった。久保選手を下げたのもあるけど、セットプレイで得意な形があれば得点率はまったく違うのではないか。後半、堂安選手の競り合いの強さが光り、敗れはしたものの面白い試合だった。

 

試合とまったく関係ないことだが、現地で応援している美しい日本人女性がごくたまに映るのが気になった。少し怖いなと思ってしまった。テレビはスイッチャーやディレクターがカメラを切り替える指示を行う。美人が映れば嬉しい、自分がそう思っているからこういう中継になるのだろうか。

 

会議中に議論が白熱し、喧々諤々となったとき、急に相手が「では、ここらへんで我が社の美人社員を紹介します」となったら「は?」となる。だが、やってることはそれに近い。サービスだと思っているのだろうな。今じゃないし、やられると本当にイライラすることもある。 スポーツ中継ではサッカーに限らず、野球でもたまに見かける。これをやるスタッフは火あぶりにしてほしい。

 

 

▼風邪が治りきっておらず、体のどこかでくすぶり続けているような感覚がある。背中の痛み、鈍い筋肉痛のようなものを感じる。そうすると、起きたときに「ああ、まだ治ってないのか‥‥」と心がやられてしまう。はてどうしたものかと考える。翌日やらなければならない仕事があり、朝の立ち上がりをなんとかしたい。

 

めちゃくちゃに筋トレをやることで、翌日目覚めたとき、風邪による痛みなのか、筋トレによる筋肉痛かわからなくしてしまえばいいと考えた。腹筋ローラーを70回ほどこなし、背中に痛みを覚えたのでやめる。これで翌日の筋肉痛は約束されたも同然。当たり前のことをいえば、体調がものすごく悪いときに筋トレをやるのは地獄だった。私は何をしているのか。

 

翌日、目覚めると背中がバキバキに凝っており、風邪か筋肉痛かわからない状態になっていた。隣席のTさんから連絡があり、筋トレをして風邪か筋肉痛かわからなくする作戦にでたことを伝える。「体、大丈夫ですか」と訊かれるが自分でもよくわからない。けっこうつらい。ひょっとしてだが、風邪による痛み、筋肉痛、両方きたのではないか。「バカなんですか?」と呆れられる。

 

「バカなんですか?」とは不思議ないい方だと、みょうに感心してしまった。なぜ訊くのだろう。「あなたはバカです」の方がシンプルでわかりやすい。なぜ、バカな相手にわざわざ訊く形が定着したのだろうか。「あなたはバカです」は直接的すぎて失礼で、だが相手への批難をやめるほど怒りがおさまっておらず、何かを一言文句をいいたくて出た折衷案が「バカなんですか?」なのか。愚問である。逆に訊きたいね、なぜ私をバカだと思わなかったのかと。いばっている場合ではありません。

 

 

▼かつて友人A子が風邪にかかったときの過ごし方について話していた。一人暮らしで風邪にかかって臥せっていると、ものすごく心細くなる。そうするとA子は徹底的に自分を追いこむという。「おまえのことなんか誰も見向きもしない。一生このままだ。独りさびしく震えながら死んでいき、誰も死んだことに気づきもしない惨めな孤独死。知り合いはみんな楽しく食事をしながら笑っている」。

 

そう考えると途轍もなくさびしい気持ちになり、涙がとめどなく流れる。布団の中で震えながら泣いているのがたまらなく気持ちいいのだとか。そして、関係がこじれておかしくなっている男に電話すると、たいてい来てくれるという。たとえ相手がギャンブル狂で年金未納のどうしようもない男でも、来てくれたことが本当に嬉しくて「まだ、やり直せる」と強く思うのだとか。

 

「それ、なんて病気?」以外にいう言葉がなかった。独特の生き方をしていて感心してしまう。奇人だけど。

 

奇人で思い出したが、このドッキリ面白かったな。森三中の黒沢さんが裏では陽キャで番組では陰キャを演じているという設定のドッキリ。陽キャ、陰キャを超えてなにかまったく別のもの、頭のおかしい魔女みたくなってて良かった。