玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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だるだるのだる~

▼寒気がして背中がこわばったような感覚があった。何年かぶりに風邪を引いたかもしれない。風邪ならいいがコロナならと考えると少し嫌な気もする。風邪ということにした。風邪であれ。風邪であれかし。

 

以前なら多少体調が悪くても出社するのは美徳とされていたが、今は周囲に迷惑となった。さっさと休めという。休んで家でやれ、はあるけど。ともあれ、よい変化だと思う。必要最低限の業務をこなし、逃亡の用意をする。隣席のTさんがこちらを見て「私、弱ってる人みるの大好きなんですよね~」と笑う。前世はライオンかなにか?

 

しかし、どこで風邪をもらったのだろう。前回の打ち合わせだろうか。打ち合わせ自体はごく普通だったが、雑談になったとき先方の男性の話に少し違和感をおぼえた。彼は自分の奥さんのことを「妻ちゃん」、赤ん坊のことを「ベビたん」といっていた。彼とは初対面で親しい間柄ではない。べ、べ、ベビたん?

 

あれを聞いてから寒気がとまらない。もしや呪いの言葉か。あいつのせいでは。とんだ言い掛かり。どんな言葉を使おうがその人の自由だ。自分が好まない言葉や誤用であっても、多くの人が使い続ければ市民権を得て辞書にも載る。言葉は誰のものでもなく、使う人すべてのもの。そうは思いつつも、帰りの道すがら「妻ちゃん‥‥ベビたん‥‥」と繰り返していた。

 

私はあの言葉で風邪を引いた。間違いない。決めつけ、偏見、冤罪全開で今年もやっていく。

 

 

▼風邪で気は引けるが打ち合わせ。気配を消して石になろう。だるいので。業務システムをある部署に導入する話だった。それにより業務手順が簡略化され、時間的にも余裕ができる。今、その部署は忙しく人手が足らないがこれで多少改善されることになる。

 

部署の担当者は忙しいのだろう、新システムの導入に否定的だった。その気持ちはよくわかる。忙しいときにそんなもの入れられても大変だし、もう少し落ち着いてからにしてくれという。だが、その「もう少し」はいつなのかわからない。ずっとそのままでは? という状態が続いている。よくある話。

 

システム導入を任されている出木杉くんの主張は明確だった。時間、費用、人手、すべてが改善するのにやらない理由がない。さあやりましょう、いつやりましょうという。これはあなたのためなんですよと説得するが部署の担当者は難色を示している。出木杉くんの言い方だと「これだけ条件が揃ってるのになんでやらないの? 理解できないの?」というふうに聞こえる。やや上からというか。

 

担当者に業務の問題点と改善すべき箇所を訊いてみる。すると今回のシステムで改善されることが確認された。自分の口で説明しているうちに理解できることもある。わかってる人には時間の無駄でわかりきったことかもしれないが、そういった確認も必要なのだと思う。みな理解の速度は違う。最後に「Aさん(担当者)の力が必要ですので是非助けてください」とお願いしたところ了解を得ることができた。

 

打ち合わせ後、出来杉くんと話したが不満そうだった。そもそも同じ社内で対等なはずなのに、なぜこちらが頭を下げて頼む必要があるのでしょうかということだった。むしろシステム導入はその部署のためで、彼らが楽になるのだから感謝されこそすれ頭を下げる理由がないのではという。

 

出来杉くんは誠実なのだと思う。自分が悪くなければ頭を下げることはないと考えている。私はそもそも頭を下げることをなんとも思っていない。肩の上に何もないと落ち着かないので、とりあえず頭をのっけているだけ。頭などいくらでも下げられる。業務システム導入でみんなが楽になるのが目的だから、それがうまくいくのならなんでもいい。どうでもいいことだ。

 

私が出来杉くんと担当者の間に入ったのは、出木杉君が担当者を言い負かしてしまいそうで、それを危惧した。出木杉くんは自分の理屈は正しいのだから、言い負かしてシステム導入を承諾させてなんの問題もないということなのだろう。自分と意見の対立する人は敵ではない。言い負かせばその場はすっきりするかもしれないが、それだけのこと。言い負かした相手とは二度と会わないのではなく、今後も付き合っていく。言い負かせば敵になるかもしれないが、協力を仰げば味方になってくれることもある。だとすれば自分の正しさを主張して、言い負かすことにどれほど意味があるのか。

 

出来杉くんは「彼は感情ばかりで理屈がないですよ」と膨れていた。人が理屈だけで動くなら世の中はこれほど混沌としていない。理屈だけで動くべきだと思っているなら、それもまた違うように思う。人は理屈でも感情でも動くということを無視し、正しいのだからと理屈を押し通すのは強引だ。自分と考え方が違う相手とも、うまくやる必要がある。考えなど同じ方が珍しく違って当たり前だ。

 

私は出木杉くんにほとんど何もいわなかった。それは彼に考えてほしいと思ったからではなく、ただただだるかったのだ。背中のふしぶしが痛い。目がショボショボする。だるい。だるさはすべてに勝るし、風邪のときのアイスクリームはおいしい。

 

そういえば少し前にも似たようなことを書いた。消すか、と思ったがそれもまただるかった。

 

 

▼ダンジョン探索ゲーム『Buriedborns2』をやり続ける。

フェアリー×デスナイトのビルド。さすがの強さ、1月下旬にさっそくナーフされるもよう。4枠目のダークパクトはなんでもよい。いろんなの拾いたいから空けてるだけ。いろんなビルドを考えるのが楽しいのだろうなあ。今30階ぐらいまで潜っている。

 

抜群に面白いゲームですが、なにせとっつきにくく難しいので流行らない感じがある。いちげんさんお断りの料亭というか、無料のゲームですけど。わかりにくいUI、説明がないスキル・ルーン・ゲームシステム、不条理な死、数多くあるバグ、容赦ない難しさ。それらを超えて私たちは進まねばならない。なにせ敷居が高い。高さ30メートルぐらいある。もはや壁。