玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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大量のいなり寿司が残った

▼年末に280gの黒豆を煮たが、まだ食べ続けている。減らないものだな。誰かがこっそり夜中に足しているのでは? 黒豆は砂糖を大量に使っているので保存もきく。砂糖を入れすぎるのが嫌で、今年は少し甘さを控えて作った。時間がたつと黒豆の味が変わってくるのが面白い。ずっと黒豆の汁につけているので、甘くなってくるのだ。時間で味がかわるワインのように楽しめる。「ご趣味は?」と訊かれれば「少々‥‥黒豆のほうをたしなんでおります。オホホホ」と答える所存だ。

 

 

▼昼ご飯を食べていると大学クイズ研出身の出木杉くんが深くため息をついた。これは仕事の悩みだな、と予感したのでほうっておく。こちらをちらちら見て、何度も深いため息をつくがほうっておいたら「普通、ため息をついている人を見たら『どうかした?』って訊くのが人としての道じゃありません?」と、たしなめられる。

 

いや、人間にはため息をつく自由があるんじゃないでしょうか。私は自由を尊重した結果、無視したのだ。けっして仕事の面倒に巻き込まれたくないとか、そういった理由ではない。けっしてけっして。結果、恋愛の話だった。なるほど、出木杉くん、その話、詳しく聞かせてもらおうか。

 

彼には付き合っている女性がおり、先日彼女が手料理を作ってくれたのだとか。だが、彼女の料理の仕方で口論になったという。「いなり寿司、どうやって作ります?」と訊かれ、私は唐突にその場でエアいなり寿司を作る手順を説明させられる。味のついたいなり寿司の皮を買ったことぐらいはあるけど、皮を煮るところからやったことはない。「まず、皮を煮て、それから酢飯を作って皮に詰めるんじゃないの?」「その酢飯を作るとこ、もうちょっと詳しく教えてください」「米をだいたいいなり寿司の分よそって‥‥」。

 

私はジャーからご飯をよそって、いなり寿司の個数にわける仕草をした。たとえば16個つくるなら、4×4にご飯をおおまかに区切れば1個あたりのおおよその分量がわかる。「そう! それなんですよ! 普通そうやりますよね?」と勢いづく出木杉くん。彼女は個数の計算をせず、適当にご飯をよそったせいで大量に酢飯が余ってしまった。さらに皮を煮る時間や、いなり寿司に酢飯を詰める時間もまったく計算していないから、二人が昼飯を食べたのは午後3時を回っていた。

 

仕事では単純作業の計算はよくやる。ある作業が2分かかって、それが30個あるとしたら2×30で、だいたい60分ということはわかる。そんな簡単な計算すらしていない。作業時間の見積もりをせず、また手順の確認もしてないから要領も悪い。「絶対、仕事できないですよ」と、出木杉くんはあきれている。

 

出来杉くんは要領がいいから、そうではない人が許せないのかもしれない。ただ、彼女にしてみれば好意で手料理をふるまったのに上司のように上から目線で評価されるのは、たまらないだろうなと思う。多少要領が悪くても、好きなように作る自由もある。ご飯が遅くなったことで口論となったが、出木杉くんは冷静で「普通、考えればわかるでしょ?」といったところ彼女は怒って出て行ってしまった。

 

「考えればわかる」というのは、本当にそうなのかなと思う。子供の頃、音楽の時間で使う笛を忘れて教師に叩かれたことがある。なにか腑に落ちないものがあった。当時は言葉にできなかったが違和感はあった。忘れるということは悪意ではない。いたずらをするということは、わかってやる悪意だが、忘れ物はそうではない。悪意ではなく意識に上らないことだから、叩いても意味がない。子供を怖がらせるだけだ。

 

それよりも忘れ物をしない仕組みを作ることが重要に思える。人はそもそも忘れるものだから、寝る前に明日の授業を確認するなど仕組みを作ることで防いでいく。だから、笛を忘れたから叩くのではなく、どうしたら次は忘れずにすむか、それを考えてみようと生徒を諭すのが教師の役目ではないか。

 

少し話が逸れた。出木杉くんは作業手順を考えればいいと思ったが、まず考えない人は「考える」「考えない」という選択肢がない。「ここは作業時間や工程を考えるべきところだ」という発想がそもそもない。どこで考えるかがわからない。忘れ物と同じで思いつかないのではないか。ないことに対して責めるのは酷に思う。自分から「こうやったらおおよその分量がわかるよ」と提案すればいいし、話し合ってもよいところ。そうすれば次からは考えられる。それを上から「普通、考えればわかるでしょ」というのはあんまりだ。それこそ、まるで考えていない人の言い方ではないか。

 

詳しく話を聞くと、出来杉くん、料理は苦手なのでまったく手伝っていないという。いくら頼んで作ってもらったわけではないとはいえ、座って待ってるだけで料理が出てくるんだからありがたいもの。味付けが好みではなかろうが、焦げてようが、もう出てくるだけでありがたいじゃないの。料理は作った人が偉い。それを上から「普通、考えればわかるでしょ」といわれれば頭にきますよ。彼女は「手順とかはいいから二人で料理がしたかった」という。「いってることに論理的妥当性がない」といい返した出木杉くんだが、口喧嘩の最中に論理的妥当性などといわれたらイラつくわー。「うるせぇ!」ってなる。「おまえ、これでも食ってろよ! この天才チンパンジーがよお!」と酢飯を口におしこまれても仕方がない。反省して。

 

先日、私は華々しくスマホデビューを決めたわけですが、まだ電話帳の移行作業を終えていない。店の人によれば「おまえのガラケーは古すぎて、スマホに電話帳データを移せない」ということらしい。手作業での移行を着々とすすめている。とりあえず、出来杉くんの名前を”天才チンパンジー”と登録して今日の作業を終えた。

 

 

Buriedborns2(スマホ、PC)

ウィザードリィを思わせるようなダンジョン探索ゲーム(無料、アイテム課金あり)。もうめちゃくちゃ面白くてドはまりしました。永遠に探索できる!

 

自分は生ける屍となってダンジョンを探索し、クリアできなければ無残な死体となり、クリアできても用済みの死体となる。どっちみち死体なのでした。また、新たな死体でダンジョンを探索するというもの。『風来のシレン』『ウィザードリィ』などにはまった人は、間違いなくはまりそう。種族と職業によってそれぞれ能力が違い、スキルも豊富で「ぼくのかんがえた最強の勇者」みたいなビルドを考えるのが楽しいところ。

 

中毒性は高く、面白いものの敷居はかなり高い。意味の分からない用語、理解が難しく使いにくいUI、不条理な死、説明のないゲームシステム、数多あるバグなど、高すぎる壁に阻まれて最初のダンジョンをクリアできない人が多いかもしれません。基本的にはどんな種族×職業でもクリアできると思いますが、今はエルフ×執行者が全盛ですね。簡単なので。時間が長くかかってもいい人はモンスターを召喚する屍術師なんかもお薦めです。

 

 

面白味はないものの、こういった感じのビルドはたしかに強い。今は30階ぐらいまで来ました。ほほほ。フェアリーでシールド増やしまくるビルドはどうなんだろ。貫通突然死がありそうですけども。このゲーム、流行ってほしいなあ。

 

 

▼映画の感想『来る』を書きました。久しぶりに観た和製ホラー。松たか子と柴田理恵が面白いかっこうしてました。微妙にイラッとする人がたくさん出ているよ!