玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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いわない人

▼化粧水がなくなったのでドラッグストアで適当なものを買う。「ハトムギ美容水inビタミンC誘導体」という化粧水を選んだが、肌が荒れにくくなったような気がする。ほほほ。

思うに、中年の男の美容情報ぐらい気持ち悪くて必要ない情報はない。誰が聞きたいんだよ、その話と思う。迷惑でも発表していく。これからもそういうブログでありたい。

 

聞きたくない話といえば、これ、何度か書いているがプロレスラーの大仁田厚さんが昼のバラエティ『ごきげんよう』(MC 小堺一機)に出ていたとき、歯磨きの話をしていた。歯を磨くときに舌も磨かないと気持ち悪くて、ただ磨くだけでなく「オエッ!」と、えづいて吐きそうになるまで磨かないと嫌だという。これを聞いたとき、心底どうでもいいと思った。記憶容量に限界のある脳がこのどうでもいい情報を憶えてしまったことが悔しくて仕方なかった。記憶を消したかった。あれから20年経つが、悲しいことにまだ憶えている。

 

今日、これを書いたことで記憶が再び強化され、あと20年は消えないのではないか。私はたまにこのまったく役に立たない情報をネットでも、リアルでもしている。リアルでは「なんですか、その話‥‥」と甚だ評判が悪い。私だって嫌だよ。でも、これからも後世に伝え続ける。

 

これが何ハラスメントにあたるのか、考えている。

 

 

▼サッカーワールドカップ、シリア×日本戦の放送がなかった。放映権料の高騰が原因と報道されていた。日本ならいくら高くても買うと思ったのかもしれない。予選だし、放送がないなら、まあそれはそれでという気持ち。YouTubeでアラビア語で「シリア 日本戦」と検索したら、中東の方が試合を配信してくれていたので観る。

 

あちらのサッカー中継は解説はおらず、常に実況の男性アナウンサーが一人で切れ気味でどなっていて面白い。景気がいいこと。日本は引いて守るシリアからなかなか得点を奪えずにいたものの久保選手の見事なミドルシュートが入り、そこからはポンポンと点が入った。実力差があり、点差も開いたこともあって面白い試合とはならなかった。

 

中東の男性はトーブやカンドゥーラという白いローブを着ていることがある。俗にいう石油王ファッションのような。全員が全員石油王というわけはないけれど。先日の試合でYouTubeの右側のチャット欄がもっともわいたのは、会場で観戦する白いローブを着た子供が映し出されたときだった。その子はかなり太っていて、シリアが負けているせいか退屈そうに椅子にふんぞり返っていた。

 

チャット欄では「未来の石油王やんけ」「石油王のガッキwww」「貫禄!」など、この試合一番の盛り上がりを見せていた。あれがシリア戦のピーク。

 

 

▼お世話になっている会社へ。24時間くんと話す。明るく爽やかで筋トレが趣味、たまにポカをやることもあるが、それも彼の愛嬌となっているように思える。女性にモテて3か月ぐらい経つと、いつの間にか別の女性と付き合っているのだとか。いや、いつの間にかて。そんな。記憶飛んでるのか、おまえは。

 

その24時間くんだが、ちょっと落ち込んでいた。今回は一か月も経たないで別れたという。「彼女が料理を作ってくれたんですけど、それが合わなかったというのも大きいですね」。何を作ってくれたのか訊くと「フライドアイスクリーム」という。聞いたことがない。アイスクリームにパン粉やシリアルなどをつけて油で揚げたものらしい。かなり癖のある料理。もたれそう。

 

「スープも独特でちょっと癖があって、黒豆みたいなのが入ったスープとか」「凝ってるねえ。料理が趣味の人?」「――いや、料理が趣味かというと‥‥そういうことでもなく、舌が違うというか‥‥でも、舌っていうかそもそも言葉がよくわかんないというのもありましたね。スマホのアプリで会話してましたし」

 

よく聞いてみると外国人だというので驚く。「アメリカ人?」「アメリカ——アメリカなんですかねえ‥‥市民権は取ったとかいっていたけれど。でも、亡命したらしくてキューバ人なんですよ」

 

キュキュキューバ!? おまえ、よくキューバ人に行けるな。すごいな。というか、料理どうこうじゃなくて「キューバ人と付き合ったんです」が話の初めにくると思うのだ。24時間くん、仕事でも報告の順番がおかしいときあるんだよな。どうやって出会ったのか訊くと、居酒屋で一人で飲んでいたのを見て、かわいいから声をかけたという。「普通ですよ『良かったらちょっと飲みませんか』って」。ためらいなくキューバ人を口説けるのは北方謙三ぐらいだと思っていたけど、恐ろしいな24時間くん。社交性のバケモノと思っていたが、国籍も関係ないのがすごい。

 

キューバ人女性は気が強いらしく、ケンカのときは全力で蹴ってきて壁に穴が開いたという。「もうジャイアント馬場みたいな蹴りで、わかります? こう足をあげてドーン! て。壁にぽっかり穴が開いちゃって」。キューバ人どうこうではなくて、その彼女がジャイアント馬場みたいなのでは? と思うのだけど。「いや、キューバ人女性は全員蹴りが強いんですよ」と譲らないのだった。本当かそれ。

「次の日、会社から戻ったら彼女はもう居ませんでした。穴を開けた壁のところ、カムフラージュしようとしてくれたんでしょうね。穴の周りに花びらが書いてあって、でも全然カムフラージュできてないんですよ。途中であきらめたみたいでマジックでグシャグシャって消してあって『ああ、一応努力してくれたんだなあ』って‥‥」。遠い目をする24時間くん。

 

なにそれ、ちょっといい話なのか? 美談みたいにいうけど壁に穴開いてますけど。24時間くんの話、どう聞いたらいいのかわからなくて面白い。周りになにもいわずサラッとキューバ人と付き合っていたのがすごいし、怖くもある。普通はいいたくなるでしょうよ。これからは24時間さんと呼ぶ。敬語で接していく。