玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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王として生きる

▼すっかり寒くなった。朝、目覚め、すぐに起き出さず、布団のなかでぬくぬくとしている。「王だな」と思う。布団のなかでぬくぬくできるぐらい贅沢なことはあるまいよ。王は自分で朝食をつくり、自転車をこいで駅までいって電車に乗り、仕事をもらっている会社にいくと、わけのわからない理由で怒られるのだった。王なのに。まったく、こんな寒い日に遠くまでやって来たのにねえ‥‥。しかし、たまには下々の暮らしをしてみるのも悪くない。帰りは店をのぞき、物価の高騰を感じた。「わが暮らし 楽にならざり」じっと手を見る。庶民ごっこ、楽し。わっはっは、わっはっは‥‥。

 

ていう遊びで、心に麻薬をうちながら乗り切る月曜日。限界は近い。

 

 

▼寒くなったのでおでんを仕込む。おでんの大根を好きになったのはいつからか。あの苦味がわかるのが大人と子供の境目ではないか。去年ぐらいから好きになった。孔子は五十にして天命を知るというのだから、私が四十半ばで大根のうまさを知っても問題あるまい。あとちょっとで天命も知れる。わくわく。

 

部屋を片付けていると中学時代のノートが出てきた。ページをめくってみると太いマジックで書かれた誰かのサインが出てきた。芸能人にもらったものなのか、しばらく考えていると友人が書いたものだと思いだした。

 

なぜだかわからないが、クラスにはサインを考えて書きたがるお調子者が一人や二人いたように思う。あれはどういう心境なのだろう。具体的にアイドルや俳優になろうというのでもなくて、ごっこ遊び、ロールプレイということでサインを考案したのかな。ふと気になったので、サインを書いた彼がどうなっているのかネットで検索してみた。

 

彼は運動も勉強もできて愛嬌があってクラスでは人気者だった。仲も良かったのだが引っ越してしまい、それからはもうどこで何をしているのかわからない。30年も音信不通である。ひょっとして、持ち前の愛嬌を活かして有名人になっているのでは。この中学時代のサイン、1万円ぐらいで売れるのでは。

 

彼の名を検索して出てきたのは、SNSにあげられた先日の競馬ジャパンカップ、大本命のイクイノックスをはずしてしまい、絶望して膝から崩れる中年男の画像だった。当時の面影はないが、まあ元気そうともいえる。独身、無職、ギャンブル狂い、ハゲという地獄の四重奏みたいな状況だった。サインは完全にゴミと判明したな。先ほど1万円でみなさんにおわけしようと思いましたこのサイン、どうでしょう、100円で買われる奇特な方はいらっしゃいませんか。

 

とりあえず、彼の落書きが入ったノートは「捨てない」に分類した。一向に部屋が片付かんな。これを捨てないに分類するからな。どう考えても真っ先に「捨て」だろうとは思うのだ。捨てないねえ、私は。

 

 

▼英語学習アプリ

chromewebstore.google.com

Amazonプライムで動画を観るとき、英語字幕に翻訳などをつけてくれるソフト。右側にはセリフが区切られたものが並び、クリックすればその場面を再生してくれるので聴き逃したとき便利。また、単語にマウスをのせれば意味が表示される。さらにセリフの右にマウスをのせれば翻訳も表示される。

 

このものすごく便利なアプリが無料なのだ。ありがたや。こんな便利なアプリがあって、私の英語は依然としてポンコツなのだからたいしたものだよ。この程度じゃ、私は話せるようにはならんね。もっとすごいのを持ってきなさい。どの立場から?

 

 

▼映画の感想『眠りの地』を書きました。ジェイミー・フォックスがカリスマ弁護士として法廷で大暴れという作品。実際の事件が基になっており、面白かったです。アメリカの司法制度、一筋縄ではいかない人種問題も描かれています。お薦めです。しかし、とっちらかった感想になってしまった。