玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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インチキにも品性を

▼月下美人に蕾ができたので、部屋に入れておいたらまた咲いた。

 

 

普通は1年に1回だが、3回も咲いたのは初めて。10月中旬でもまだ咲くのだな。ゾンビのように何度もよみがえる。もうちょっと、きれいなたとえをするように。

 

 

 

▼AI生成、よくわからない幻想的できれいなやつ。

 

 

よくわからない幻想的できれいなやつを作ろうと思ったらAIに限る。

 

 

 

▼朝から外出。小学校低学年ぐらいの男の子とエレベーターで一緒になる。「お母さんが『もう、ご飯作るの面倒くさい!』っていうから、今日の朝ご飯、栗だけだった。でも栗好きだから嬉しいし、いつもよりおいしかった!」と一息にまくしたてた。「栗、おいしいよね」というと「うん。食べ物の中で一番好き! 行くね!」と返ってきた。エレベーターの扉が開くのも待ちきれない様子で、男の子は元気に駆け出していった。まぶしい。すまんがその石をしまってくれんか‥‥わしには強すぎる‥‥というラピュタの爺様の気分。

 

外に出るときは無意識に心に鎧のようなものをつけ、自分を守っている気がする。でも、ごくたまに心が開いている人と接すると、そのまぶしさに圧倒されてしまう。だが、おまえは誰なんだ、というのもある。完全なる初対面の子。

 

 

 

▼昼、テレビを見ていると姫路城を取りあげた番組がやっている。城郭考古学者の千田先生が出演していた。千田先生が城を語るとき、とても嬉しそうで早口になっている。自分が一番楽しそうというのが、もっとも重要な教育者の資質に思える。勉強しろとか、本を読めとか、そんなことをいわれるよりも、楽しそうにしているのがもっとも学習に効果的なのではないか。「こんなに楽しそうだから、この学問はさぞ面白いに違いない」と思える。

 

千田先生は、入り組んだ姫路城の通路を説明する際「ほら、この角にいると、こっちから岩を落とされるし、あっちからは背中を撃たれちゃう。もう撃たれ放題なんですよね!」と興奮している。撃ち放題ではなく、撃たれ放題。やられる側の視点で興奮するのが千田先生。殺されるのが大好きなんだよな。千田先生の奇妙な性癖。観ていてとても楽しい。

 

 

 

▼テレビを観る時間が本当に減ってしまった。つまらないのではなく、放送されたものについていろいろ考えを巡らすのが面倒なのかもしれない。純粋に楽しむより、ちょっとしたことが気になってしまう。

 

先日、テレビをつけたらアニマルコミュニケーターという外国人の女性が出ていた。初めて聞いた職業。ペットとコミュニケーションをとってペットが考えていることを飼い主に伝えられる。それは遠隔でも可能で、ペットの写真があって名前がわかればペットの考えていることがわかる。またすでに死んでしまった天国にいるペットとも交信できるという。アニマルコミュニケーターの女性と話した滝川クリステルさんや具志堅用高さんは涙を流していた。インチキではあるけれど、こういうのもありなのかなとも思う。かつては「口寄せ」といって死者の言葉を伝えるイタコがいた。遺族がイタコと話すことで慰められることもあっただろう。イタコはさすがに信じられないが、アニマルコミュニケーターはギリギリ信じられるという人もいるかもしれない。

 

ペットから「自分と過ごせて幸せだった」そういってもらいたい飼い主の心情はわかる。でも何か嫌なものを感じたのは、アニマルコミュニケーターの人が、自分を信じさせようとしていることだった。具志堅さんのペットの部屋の間取りを「三方向から光が入って、白い部屋でカーテンがあって」などといい当て、「どうしてわかるの?」と具志堅さんを驚かせていた。部屋はだいたい二方向か三方向から光が入るものだし、壁紙の多くは白か灰色で、カーテンはあるのが普通のことだ。他にも部屋には飼い犬の絵があって、その絵は首から上のものだといい当てていた。テレビ局の人間から聞いたのか、どうやって当てたのかはわからない。でも、ペットの部屋の間取りとか、犬の絵が飾ってあってそれは首から上のものであるとか、そもそもいう必要がない。信じさせようという下心が透けて見えるようで嫌だった。ただ、ペットが飼い主のことを愛していたと伝えてやれば、それだけで飼い主は救われるのではないか。

 

超能力や占いなど、遊びで楽しむ分にはもちろんいいが、あまり真面目にやるのもどうもなというのがある。テレビ局がこういったものを放送するのも、あまりいい気はしない。いちいちこういうことが引っかかるというのは、私の今の精神状態がよくないのではないかと心配になってしまう。

 

アニマルコミュニケーターを検索すると、いくつか資格が出てきたので驚いた。科学的根拠がないので、もちろん国家資格ではない。受講料もけっこうな値段をとり、100万円近くかかるものもある。資格ビジネスの一つなのだろう。こんなインチキを資格にしようとして、と嫌な気分になる。頭がよくてモラルがない人はどこにでもいる。やはり人類は滅ぶしかないのだと気持ちをあらたにした。滅ぼそう人類! これをスローガンに生きていく。