玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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山にこもりたいけれど

▼金目鯛の煮付けを作って9月が終わる。金目鯛はそうでもなかったが、一緒に似た椎茸が美味かった。そういえばブログを引っ越したいなと思って早5年ぐらい経つ。次のブログはnoteあたりがよさそうだけど、使い心地はどうなのだろう。気が重いのが引っ越しの手間である。引っ越し楽々パックみたいなのがないからな、ブログは。過去の記録をどうするのか。持っていくべきなのか、消してしまうか。と思っている間に10月だし、なんならすぐに10年経っているのだ。恐ろし。

 

 

 

▼9月からサービスを開始したオンラインゲーム『SYNCED』をやり続けている。撃ち合いのゲーム。

 

 

初のイベントでシネマモードというものが始まった。ほとんどなんの説明もないのがさすが。不親切すぎる。ユーザーを甘やかさない運営といえましょう。はやばやとサービス終了しそうではあるけど。シネマモードはダメージ表記や自分の体力などが消されてしまい、ユーザーから確認できない。体力の減り具合などは勘をめぐらせて戦うしかない。うっかりすると死ぬ。弾薬庫の場所なども一切表示されない。このゲームに慣れた人がやる分には面白いかもしれないが、サービス開始したてのゲームで、初回イベントにもってくるにはちょっとハードルが高いように思う。始めたばかりの人はわけがわからないだろう。ファミコンゲームのような厳しさを感じさせる運営。昭和の香りがする。

 

そういえばDuolingoという英会話アプリを続けて1年以上になった。幼稚園児以下の英語しかできない。それも今のところSYNCEDでチームを組んだときのコミュニケーションでしか使っていない。もう本当にそれだけ。仕事でいっさい使わないから。じゃあ、べつに英語使えなくてよいのでは。

 

 

 

▼金曜ロードショーでアニメ『葬送のフリーレン』初回2時間スペシャルを観る。『推しの子』もそうだったが初回にドンとスペシャルをやって通常放送に入っていくというのが最近のパターンなのだな。学ぶ。剣と魔法のファンタジーの世界のちょっといい話みたいな作品だった。面白かったです。来週から観ようかな。

 

 

 

▼給湯室でコーヒーを淹れていると、部屋に奇妙な虫の出る女こと虫ちゃんがやってきた。

 

 

虫ちゃんはたまに肩の部分があいたトップスを着ている。あれを見るとつい「お、どうした? 肩の部分の生地、買えなかった?」といってしまう。だいたいため息をつかれる。子供の頃、オヤジギャグをいう中年が理解できなかった。少し考えてみればわかるのに、どうしてあんなつまらないことをいうのだろうと思っていた。

 

10代の頃ならば頭に浮かんでも却下していたものが、40代になると「いいたい欲」が勝ってしまい、やすやすと脳の関所を通過する。面白いつまらないは別として、とにかくいいたい。老人が同じ話を何度もするのも、このいいたい欲だと思う。本人も同じ話を何度もしていることはわかっていて、なおそれでもいいたいのだ。わたしにも老人力がついてきた証といえよう。

 

虫ちゃんからは「去年もいいましたよ、それ」などと指摘される。アホか。去年もじゃないんだよ。毎年毎年いうことによって「お、今年はまだアレを聞いてないな。アレを聞かないとどうにも秋がきた気がしないね」という秋の風物詩を目指したい。そういうところまで行きたいんだ、私は。などといえば、本当にうんざりした顔をしたので「リアルに嫌な顔はやめて。傷つくから」と伝えた。

 

虫ちゃんは任されていた仕事がうまくいったらしく「いぇ~い」とハイタッチを求めた。ハイタッチを交わすと上機嫌で出て行った。虫ちゃんと私のやりとりを眺めていた出木杉くんが軽いため息をついた。

 

出木杉くんから、先輩とあまりうまくいってないという話を聞く。私も反りの合わない先輩の下についたことがあって、そのときはなかなか大変だった。人間は面白いもので、どんなに頭の良い人でも相性の悪い相手とはうまくやれないものだ。短期間ならばともかく、自分の心をずっと偽り続けることはできない。どこかで無理がでてきてしまう。配置転換を希望しても、小さな会社は異動も目立つからなかなか大変。

 

相性というのはどうにもならない問題で、仲良くするのは無理でも、険悪な雰囲気にならないという妥協点を探せればそれで十分という気もする。私は学校が好きでも嫌いでもなかったが、学校に一ついいことがあるとすれば思想信条が違う生徒を何十名もつめこむことに思える。それで殴り合いのケンカをせずに、どうにかこうにかやっていく。知識や技術はいくらでも学べるが、人間関係の学習がもっとも重要なことかもしれない。

 

出来杉くんの先輩は独特なまわりくどさがある。こちらが間違えたとき「どうしてそういう判断になるのか、理解できませんね」といういい方をする。過剰に威圧的、高圧的、パワハラというわけではなく、かすかにひっかかる嫌な感じがあるのだ。出木杉くんは知識や経験で先輩に及ばないから、たびたび注意を受ける。先輩のいっている内容は正しいから、教えてもらっている身で「その注意の仕方が気に入らない」とは指摘できないだろう。こういうことはよくある。だが、降り積もったストレスは相当なものかもしれない。

 

仕事で重要なのは知識や技術ももちろんだが、半分は人間関係なのだと思う。体育会系の24時間くんは、この先輩ととてもうまくやっているように見える。24時間くんは「元気なバカ」という感じで下手に出られるし、変なプライドがない。衝突がないのだ。本人にどれだけ自覚があるかわからないが、これは人並み外れた才能に思える。出木杉くんは自分にとって敵味方をわけすぎるし、尊敬できない人の指示に従いたくないという気持ちが出てしまっている。世の中は違う思想信条の人ばかりだし、尊敬できる相手としか仕事をしないとしたら山にこもるしかない。純粋すぎるように感じる。でもこうやってみんな一つ一つ自分で乗り越えていくしかないのだろう。

 

 

 

▼映画の感想『寝ても覚めても』を書きました。『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督作品。主人公二人が変人という映画。変人映画が好きな方には。