玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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才能は丸い形をしているのか

▼あちあちの8月。暑さで作業効率が1/3ぐらいになる。とはいえ、3月4月は花粉症、6月は鬱陶しい梅雨、12月~2月は寒すぎる、5月はゴールデンウィークで浮かれてしまい、9月と10月は秋の味覚が美味しくて集中できないなどといえば、おまえ、いつも集中してないだろうとなる。

 

 

AI生成パンダ。よく見るとガラがおかしいのだな。親パンダは体が真っ黒で、子パンダも何か変。人間については、みなせっせと画像を集めて美男美女を作るから改良がすすむ。しかし、パンダ業界の歩みは遅い。今、熱心にパンダ画像を収集してモデルを作ればパンダ業界でトップに立てるチャンスがある。需要がないけれど。

 

 

 

▼外国人に自分の文章や発音が正しいか訊ける『HiNative』というサイトがある。たいていのことはDeepLなどの翻訳サイトで事足りるが、スラング、時事などは対応しきれないので助かる。訊くだけではなくて、質問に答えることもできる。答えているとお礼をいわれ、それが少し嬉しい。人の役に立ちたいというのは自然な欲求なのだろう。際限なく答えてしまうな。SNSなどでケンカばかりしている人は、質問に答え続けるといいと思う。質問に答えるとだいぶエネルギーを奪われるので。感謝されるし、いいことしかない。

 

戦前の文書を読んでいるのか、日本の漢字ついて質問してくるイタリア人がいた。鶴嘴(つるはし)、土臺(どだい)、落魄れる(おちぶれる)など、今ではほとんど使わない字を使って攻めてくる。いったい、おまえは何を調べているんだと聞きたくなる。だが、延々と答え続けて午前2時をまわってしまった。いったい、私は何をしていたのか。

 

「おはようございます」というのに「こんにちはございます」といわないのはなぜ? と訊かれてびっくりする。たしかに「こんにちはございます」といってもいいような。うまく答えられなかった。「おはようございます」というのは「今日も朝からお早いですね」のような文が基ではないか。それが縮まって「おはよう」という。「こんにちは」は漢字で「今日は」と書く。「今日は本当にお日柄もよく‥‥」などが詰まって「こんにちは」なのだろう。だから「こんにちわ」とは書かない。「こんばんは」も同様「今晩は本当に月がきれいで‥‥」などが詰まったのだろう。

 

だが、もはや「こんにちは」「こんばんは」は一つの単語になっている。私のいとこは50歳を超えるが「こんにちわ」と丸文字で書いてくる。義務教育の敗北を感じる。だが言語は変わりゆくもの。「こんにちわ」を認めてもいいのではないか。だとすれば「こんにちはございます」もありなのではないか。隣席のTさんに「こんにちはございます」を積極的に使っている。「なんですかそれ?」と白い目で見られ「日本語をおぼえたての外国人の設定で暮らしている」と答える。日本人は外国人に優しいというがあれは嘘だな。石をひっくり返したとき、這い出る虫を見るような目で見られている。

 

 

 

▼隣席のTさんにはAさんとBさんという二人の友人がいる。二人の趣味は絵を描くこと。よく二人で出掛け、一緒に絵を描いていたという。しかし、AさんがSNSで絵をアップしたところ反響があり、個展を開けるようになったという。それは良かったのだけど、無名のときは仲が良かった二人だがBさんはAさんに嫉妬し、いっさい連絡をとらなくなったという。Aさんはそれがショックで塞ぎこんでいるとか。

 

「友達の成功を喜べないって、なんだか人としてさみしいですよね」とTさんはいう。一般的にいえばそうなのだろうけど、本当にそうなのかなと思う。横浜大洋ホエールズ、ベイスターズ、広島カープで活躍した石井琢朗という名選手がいた。横浜時代に力が衰え、引退を打診されるが拒否して広島で現役を続行することになる。広島に来たときは半分は選手として、半分はコーチのように後進に技術を伝えることを望まれていたらしい。

 

現役時代の石井は、同じポジションの選手がエラーをすると内心「やった」と喜んでいたという。その記事を読んで正直な人だなと思った。チームが勝つのが一番という答えは模範的だし、正しいとは思う。でも、自分がレギュラーとして出たいというのは選手の本能だろう。石井は広島に移り、全盛期は二塁を守っていたが守備範囲も狭くなったため三塁に移っていた。自分は控えにまわり、自分が教えた三塁手がいいプレーをしたとき、素直に嬉しかったと語った。そのとき引退を決意したという。

 

石井がかつて味方のエラーを喜んだとしても、その気持ちに醜さは感じなかった。それほど試合に出ることを熱望したからこそ、すばらしい成績が残せたのではないか。負の感情ともいえるけど、それだけの強い気持ちがあるから成功できたように思える。Bさんの態度はたしかによくないものの、その強い感情が作品にいい影響を与えればすばらしい作品を作ることもできるのではないか。才能は丸い形をしておらず、周囲を傷つける棘を持っている。そんな気がする。もしBさんがAさんの成功を心から喜んだらすてきなことだけど、そういう人がすばらしい作品を作れるかといえば、それはわからない。難しいのは、性格がよくてすばらしい作品を作る人もいることである。

 

というようなことをTさんにいったら、Tさんは難しい顔をして黙っていたがしばらくして口を開いた。「ネットで匿名でAさんのことを誹謗中傷している人がいて、でも、その内容ってAさんとBさんの二人しか知らないことで、どうもその人Bさんらしいんですよね‥‥」という。

 

うーん、Bさん、単にむちゃくちゃ性格悪い奴なのではー? と思いました。