玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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長続きする人、別れる人

▼母が自転車で転び、膝を痛めたので医者へ。頭を打ったわけではなく、倒れ込んだときに右足を踏ん張って右膝を痛めた様子。

 

杖がなければ歩けない状態で、椅子からもなかなか立ち上がれない。これはうわさに聞く寝たきりコースなのではとおびえる。右膝は見た目にはなんともないのだが、触ってみるとむくんで腫れあがっている。診てくれたのはにこやかな60歳ぐらいの先生。どうやら膝に水か血が溜まっているというので注射器で抜いてもらう。針がだいぶ太い。血は粘性があるので、細いのだと詰まってしまうのだとか。「もっと太いやつでも大丈夫ですよ」といってみる。

 

注射器を刺すと溜まっていた赤黒い血が出てくる。人間性が血に表れるに違いない。一本半(40cc)ほど抜いた。血を抜いたところ、だいぶ痛みも減って歩きやすくなったようで安心する。「死なないんですか?」と訊いたところ「まだ大丈夫です」といわれる。そうか、まだかー。いや、まだって。新任のお医者さん、なかなか愉快な人。医療費はレントゲン、穿刺で490円、痛み止めと湿布で290円。医療費の一割負担は本当に安い。国の医療に感謝する日。

 

 

 

▼最近はゾンビを片っ端から殺すゲーム『ダイイングライト』をやっている。親を病院に連れていき、ゾンビの頭をつぶす日々。情緒が変になりそう。

 

 

 

経理のおばちゃんと雑談。だんなさんと結婚して40年とのこと。なかなかの年月。結婚生活長続きの秘訣をきくと遠くを見つめたまま「貧乏だったからねえ‥‥」としみじみ答えた。子は鎹(かすがい)という言葉があるが、貧しさも鎹の一つになり得るのかもしれない。芸能人などと違ってお金がなければ、ケンカしても家を飛び出してホテル暮らしというわけにはいかない。なんとか仲直りせねばならず、憎くてもどうにかこうにかやっていかねばならない。結婚生活がどんな形でも続けば良いというわけではないから、継続したことが本当に良かったかどうかは誰にもわからないだろうけど。本人にすらわからないことはある。

 

一昔前、熟年離婚が流行った。亭主が退職したのをきっかけに離婚する。退職金を半分もらって、そのあと年金生活に入ればどうにか暮らしの目途がつくと計算が立ったのだろう。先立つものがなければ離婚もできない。熟年離婚というのは、一応は豊かさの裏返しと考えることもできるのだろうか。昔よりも今のほうが若い人の離婚率が高いというのは、以前より女性の働き方もかわってきて多少は自活しやくすくなっていると考えれば、離婚率の高さも悪いとはいいきれない。

 

同じ経理のKさん(女性、30代)は最近離婚したという。「オタクのくせに浮気しやがってよお」と怒っていた。Kさんは、前に付き合っていた男性がモテすぎて浮気ばかりしたという。それであえてモテないオタクと結婚したというのに、こともあろうにそのオタクが浮気したというので許せないらしい。「オタクが浮気って、契約違反じゃないですか? こっちはおまえがモテないから結婚したのに」という。知るか。なぜ、わたしに訊くんだ。わたしを同じカテゴリに入れるんじゃないよ。

 

みな、いろいろあるが生きている。わたしは今日もゾンビを殺す。