玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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深夜ラジオの懐かしい気持ち

▼20年ぐらい使い続けたブラウンの髭剃りがついに壊れた。特に高い商品ではなく当時、四千円もしなかったと思う。20年ぐらい使っていると「ことによると、これはもう壊れなくて永遠に使えるのではないか」と思ったりもしたが、そんなことはないのだ。スイッチを入れたとき、バチッと音がして胸のランプがオレンジに光った。いつもは緑なのだが初めてオレンジが灯り、辺りに焦げたような臭いが漂い、動かなくなった。それが彼の最後だった。本来なら戒名をつけて線香の一つも上げなければいけないぐらい役に立ってくれたが、ビッグカメラで髭剃りの回収をしていたので託す。次の髭剃りもブラウン。

 

 

 

▼ロシアがウクライナに侵攻して一年。長期化するのだろうか。

 

日本放送のラジオ『オールナイトニッポン』が55周年ということで、当時DJを務めた人たちが復活してラジオ放送をしていた。放送後一週間はラジコで無料配信しているので、もしよろしければ。タモリ星野源松山千春などの放送を聴く。

 

学生の頃はオールナイトニッポンを聴いていた覚えはない。TBSのパックインミュージックをテスト期間など、一夜漬けのときによく聴いていた。ラジオは、歳の離れた人の話を聴けるのが新しい世界を教えてくれるようで楽しかった。テレビも新しいことを教えてくれたけど、ラジオは距離が近くて、自分だけに語りかけてくれるような魅力がある。

 

タモリさんと星野源さんの話はジャズやブルースについてのものが多く、専門的でわからなかったが、二人が楽しそうに話している雰囲気がよかった。「自分にはわからない良い物があるのだな」と、少し憧れる気持ちにもなった。星野源さんは、タモリさんが難しいことをいったとき、リスナーにわかるようさりげなく補足するところに優しさを感じた。細やかな気配りができる人なのだろう。

 

松山千春さんのラジオは、松山さんを若い頃に見出した竹田ディレクターと、病気で亡くなられたお姉さんの思い出でとても悲しいものでした。たまにまったく聴いたことのないラジオを聴くのも楽しいもの。そのあと爆笑問題のラジオを聴いたら、太田さんが秋元康のことを「日本で一番えらいブタ」と罵っていて笑ってしまった。

 

 

 

▼友人Fと久しぶりに話す。とてもミーハーな人で流行りものが好きというわかりやすい人。喜怒哀楽もはっきりしている。好きな映画もアニメ『ワンピース』の何かだったり『世界の中心で愛を叫ぶ』だったり話題作が多い。映画が好きで観ていると、好きな作品を聞かれたときにどこかかっこをつけて、ちょっとマイナーな作品を挙げがちになってしまう。友人Fは恥ずかしさや見栄もなく、本当に自分の好きな作品を挙げられるから偉い。

 

わたしは『アベンジャーズ』のシリーズが好きだけど、やはり好きな映画が『アベンジャーズ』とはいいにくいものがある。ヨルゴス・ランティモス監督の『ロブスター』やパティ・ジェンキンス監督の『モンスター』を挙げた後に「そういや『アベンジャーズ』も好きかも‥‥」などということがある。いやらしい本を買うのにカモフラージュとして一緒に参考書を買う気分である。『アベンジャーズ』はエロ本ではないですけど。

 

好きな物をなにも考えずに好きといえるFの素直さに尊敬を覚えてしまう。本人にそんなことを伝えたことはないけれど。また、Fはそういった正直さ、ミーハーさも手伝ってか友人の中では軽く見られているところがある。友人たちがFのドジな話で笑っているとき「Fを笑い物にしていいのは私だけだ!」と内心憤っているところがある。それもまたどうかと思うけど。そして負けじと余計にFを貶めるような話をし、結果、私が一番Fを笑い物にしている。なんとも人の心とは難しいものよ。