玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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初雪

▼久しぶりの雪。5センチぐらい積もった雪も、日影のもの以外はすぐに溶けてしまった。ガードレールの上に積もった雪をすくいとって、ぎゅっと握って雪を氷にする。子供の頃からこうやって氷を作ることが好きだった。手が冷たさでジンジンとかじかむ。掌の上の半透明の氷の塊を眺める。

 

一か月に一度ぐらい、意味もわからず生まれてきて、ここに存在し、意味もわからず死んでいく、そしてもう二度と意識をもつことはないのだなと悲しい気持ちになってしまう。存在の不条理さ、残酷さよ。みな、そんなことは中学時代に考え終わり「存在の理由など考えてもわからないし、他にやることあるしまあいいか」と切り替えてきたのだろう。四十半ばにして、まだこんなどうしようもないことでクヨクヨしているのだから我ながら驚く。四十といえば、住宅ローンの返済に頭を悩ませ、子供と妻に無視をされ、会社ではパワハラとセクハラがバレて居場所がない。それが正しい四十代じゃんかあ! それはまた極端ですけど。

 

ずいぶん違う方向に来てしまったな。

 

 

 

▼パチカというアフリカの民族楽器を買った。木で作ったアサラトは耐久力が弱いらしいので、練習用にパチカというプラスチックのものにした(写真はアサラトです)。

 

 

紐の部分を指に挟み、木の玉を飛ばしてもう一つの玉に当てて音を出していく。まだ全然うまく鳴らせない。YouTubeで巧みに鳴らしている人の動画を観てうなる。簡単そうに見えるがとてもあんなふうにはできない。あと、アサラトうまい人、みんなモコモコの毛糸の帽子をかぶっているな。なんかそういう決まりでもあるのか。

 

 

 

▼新婚のSさんの話を聞く。Sさんの奥さんは専業主婦で、家でいつも料理をつくって待っていてくれるという。奥さんは料理上手な人で、Sさんが味見をして「うますぎる! うますぎ罪で逮捕します!」と敬礼すると、奥さんが「うますぎ罪で逮捕されます!」と敬礼を返してキャッキャしてるとか。バカ夫婦である。

 

私はSさんののろけ話を聞くのが好きだが、隣席のTさんは気に食わないらしく、毎度、荒んだ目でSさんを見詰めてくる。三人ぐらい殺してる奴の目をしている。年末に知り合った男とうまくいかなかったことも関係しているのだろう。Tさんがあまりに険しい表情をしているので「顔‥‥」というと「あ?」と、眉間に皺をよせてこちらに詰め寄ってくる。ヤンキーじゃん。目が合った瞬間因縁つけにくる昭和のヤンキーじゃん。「うますぎ罪で逮捕します」と敬礼してみせたら、私の敬礼している小指をつかみ、曲がらない方向に曲げられた。ひいいいいいい。恐ろしい人。

 

 

 

▼映画の感想『犬も食わねどチャーリーは笑う』を書きました。SMAPの香取慎吾さん主演。妻がSNSにダンナの悪口を書いていましたという話。面白かったです。