玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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猫を飾る

▼パッとしない人間が、パッとしない部屋に住んでいる。今までまったく考えなかったが、写真か絵でも飾ってみたら何か変わるんじゃないかと思い立った。自分の思いつきにウキウキする。幸いにも額はあることだし、気に入った絵を額に入れて飾ってみた。でも、何も変わらないんだな。部屋のパッとしなさに絵が押されている。部屋のダサさに負けている。もっと圧のある絵や写真を飾らなければ駄目なんじゃないか。力道山とかアントニオ猪木みたいなやつ。仮にそれで何か変わったとして、そんな部屋いやだよ。

 

 

猫を飾った。

 

 

 

▼友人と話す。子供がひろゆきさんのYouTubeを見すぎて、ひろゆきそっくりの喋り方になっているといっていた。どういう喋り方か気になる。

 

「『こんな寒いのに海にすんでるラッコ、あれ全員バカです』みたいな?」と訊けば、違うといわれた。私もなぜラッコを例に出したのか、よくわからないな。友人の子供は、何かいうたび「それ、エビデンスあるんですか?」とか「あなたの感想ですよね?」と返してくるのだとか。はっはっは、腹の立つ子供。ぶん殴る以外に答えがあるだろうか。いや、ない。

 

 

 

▼三谷幸喜が朝日新聞に連載しているエッセイ『ありふれた生活』をまとめた単行本を読んでいる。2002年から続いているエッセイで3冊目まできた。なんとまだ現在も連載中。ストーカーみたいな続けっぷりに恐れ入る。古い日記やエッセイが好きで、あえて時間が経ったものを読むことがある。当時の雰囲気だとか、著者が自信たっぷりに予言していることがまったく見当違いだったりして、そんなところも楽しい。

 

3冊目では、女優で元奥様の小林聡美さんとまだ幸せそうに暮らしている。これから離婚することはこちらは知っており、神の視点で眺めているものだからみょうな気分になる。

 

 

 

Amazonでは三谷さんが監督したシットコム(観客の笑い声が入るようなシチュエーションコメディ)の『誰かが、見ている』(香取慎吾主演)が2019年に公開されている。三谷さんが日本でもシットコムをヒットさせようとシットコムの『HR』を作り、それで2019年の『誰かが、見ている』にも繋がっていることがわかる。夢をまだ追い続けていたのだなと感心する。ドラマ『合言葉は勇気』『HR』でも香取慎吾さんを起用しており、その信頼関係なども感じられて嬉しい。

 

だがもっとも印象に残っているのは野坂昭如のエピソード。番組で一緒になった野坂昭如は目立つことが大好きで、死んでも霊となって自分の墓に現れたい、墓が有名になって観光スポットになってほしいのだとか。このエッセイの時点でだいぶ歳で、枯れたこともいいそうなのにまだギラギラしている狂気のジジイで面白い。丸くなったり、物分かりよくなるのもいいが、暴走老人というのはすてきだな。

 

 

 

▼映画の感想『グレタ ひとりぼっちの挑戦』を書きました。環境活動家グレタ・トゥーンベリのドキュメンタリー。彼女の主張ではなく、人となりに焦点があてられた作品。メディアでの取り上げられ方と、この作品での彼女の人柄との間に乖離を感じました。どうしても注目を集めるたびに、過激な発言などが取り上げられますがそういったことがグレタを誤解させてきたのかも。