玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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任命責任を問わない

▼大臣が三人立て続けに更迭された。こういう不祥事が続くとたいてい首相の任命責任が問われる。毎回不思議に思ってしまうし、任命権者に同情してしまう。べつに与党を支持しているわけではないけれど。成人した大人が何をやろうとそれは本人の責任で、不祥事を起こしたら本人の責任を追及すればいい。

 

そもそも任命責任というものがよくわからないのだ。たとえば会社で部下が不祥事を起こしたとして、その部下をチームに加えたのが自分だとする。これは任命責任が生ずるのだろうか。そもそもプライベートなどよく知らないし、ただ一緒に仕事をしていただけで、まさか彼が全裸で全身にハチミツを塗りたくって熊のオリに侵入するとは思わない。そういうのプライベートの問題じゃんかあ、と思ってしまう。違うのだろうか。

 

任命責任が発生すると思っている人は、人が予測可能な生き物だと考えているのだろうか。私は人が何をするか到底予測できないように思う。もし予測可能ならば、誰だって不祥事を発生させる人を役職につけないし、そもそも採用しない。それでも世間で不祥事は起き続けているし、これからも起きるだろう。どんなに熱心に面接をやろうと、その人が何をしでかすかなどわからない。人が何をやるかはわからないのだから、その責任を本人以外に問うのは違うように思うのだ。もし私が迷惑系ユーチューバーになっても、連続殺人鬼になっても、それは私だけの責任であって誰かの任命責任を問うべきではない。あらかじめ申し上げておきたい。何かやる気ですか。

 

 

 

▼本は同時に3冊ぐらい読んでいる。飽きっぽいので小説、実用書、エッセイを並行して読み進める。本はなかなか好みのものに巡り合わない。10冊読んだとして1冊気に入ればいいほう。吉村昭の小説を以前はたまに読んでいた。『大黒屋光太夫』『破獄』『敵討ち』などいずれも面白い。エッセイも出していたことを知り『縁起のいい客』というエッセイ集を手に取った。一つ一つが短くて読みやすい。

 

ものすごく面白いかといえばそんなこともなく、淡々と日常を記している。作品に出会う年齢も重要なのかもしれない。どうだどうだと面白さをこれでもかと見せつけようとするものより、何気ない日常を描いたものに惹かれる。作品の落ち着きに自分の年齢が少しだけ追いついてきたのかもしれない。吉村昭はオチンチンびろーんとか、書かないから偉い。普段どんなの読んでんだという話ですけど。

 

『図書券』というエッセイが心に残った。吉村昭は戦艦武蔵建造について執筆したとき、三菱重工業の長崎造船所を取材している。のちにこの長崎造船所が火災事故を起こし、完工間近だった豪華客船が燃えてしまう。取材時にお世話になった人や地元の方が意気消沈していると聞き、少しでも支えになればと何か書くことを思い立つ。また知人から新聞社に掲載をもちかけるからエッセイを寄稿してくれないかと頼まれる。

 

吉村昭はエッセイを書けば売り込みのようになってしまうからと断り、新聞の読者の言葉のような投書欄に寄稿することにする。もちろん掲載される保証などない。有名な作家が投書欄に投稿したことで、新聞社でも同姓同名の別人ではないかと思ったらしい。吉村昭は掲載されるかどうか新聞社からなんの反応もなくドキドキしたものの、無事掲載されて謝礼の図書券2枚(1千円分)をもらったことを嬉しそうに書いていた。微笑ましい。著者の高潔な人柄が垣間見える。ゆったりとした気分になるエッセイでした。

 

 

 

 

▼映画の感想『UNIT7 ユニット7 / 麻薬取締第七班』を書きました。スペイン警察の麻薬捜査を描いた作品。暴力ふるいがち、汚職しがちという王道の麻薬映画。もう悪い事やってないほうが珍しい。麻薬捜査ものとしてはよくある作品ですが、その中でも暴力多めになっております。