玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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最近観た作品

▼映画を観るとき、わからないものを観ることがある。自分が好きなジャンルの作品は展開に予想がつくことが多い。好きなものは「やっぱり良かったなあ」と確認しにいくところもあって、驚かされるということはほとんどない。そこへいくと知らない分野だとか、苦手な分野は驚かされることがある。そこから好きになって世界が広がることがある。好きなものは面白くても既にわかっているし、わからないものはそこからわかることがあるということなんだと思う。

 

もっとも、そんなうまくいくことは稀で、たいていは「また、つまらぬものを斬ってしまったな‥‥」という石川五右衛門的心境になることも多い。ハズレを引く確率は高い。だが、自分でハズレを引き続けてこそ当たりの喜びがあるし、ハズレと思っていても後々考えてみるとハズレではなかったということもある。ハズレが積み重なれば、そこから見えてくるものもある。10代の頃のようにがむしゃらになんでも観るという気持ちが落ちてきて、上澄みをすくって当たりだけをつかみたいというずるい気持ちが強くなる。これは時間がないことや今までの経験も関係あるが、体力と関係しているのではないか。単純に疲れちゃって気力がないという。

 

とにかく量が必要で、人が「いいよ」と薦めてくれる上澄みだけをすくっていてはダメなのだ。とはいうものの、ハズレは引きたくはない。でも、そこを引く。引いて引いて引いていかねば。引いた結果、画面の前で「アホー!」といってますけど。それも楽しい。

 

 

「アホー!」といったのがこの『リーサル・ストーム』。メル・ギブソンの代表作『リーサル・ウェポン』をもじってタイトルを付ける志の低さ、あわよくば続編かスピンオフかと勘違いさせようという、これはハズレ臭しかしない。それでもあえて拾いにいく。石を拾い続けてこそ玉に当たることもあるのですよ。やっぱり石だったんですけどー。しかもわりと粗悪品だった。竜巻の横に大きく映っていますがメル・ギブソンは主演ではなくチョイ役。あと、肝心のストームがない。「マンションから出られません!」てお話で、マンションをあっちへウロウロ、こっちへウロウロ。ストーム感がないよ。せめて屋根の一つでも飛ばされてほしかった。そういう気概がみたかった。ラストは部屋で隠れて飼っていたクロヒョウ? みたいなのに食われるし。いや、そんな物騒なもの隠れて飼うんじゃないよ‥‥。

 

それからクリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』を観ました。好きな監督ですが、いよいよわけわからんことになっていた。複雑な映画で、まったく理解できませんでした。わからないにもいろいろなレベルがあると思う。外国語で小説を朗読されても意味がわからず寝てしまうと思うけど、この作品のわからなさはそこまでではなくて、わからなくても2時間半という長さを退屈せずに観られるのだ。画が面白いというのはあるけど、すごいことだと思う。

 

作品をミクロに分析していって、サイトや解釈を観たりすればそれなりに理解はできるのでしょうが、なんだか眺めているだけで楽しかった。わかるものより、よくわからない変なものとか、思わず「それで?」といってしまうような投げっぱなしの話に魅力を感じるようになっている。こんなわけのわからない話、スポンサーに説明するとき、どう説明したのだろう。不思議な作品。いくらなんでも「そうはならんだろうよ」と思うのだけど、具体的にどう間違っているか言葉で説明できない。巻き戻しのコントみたいで、撮影現場は楽しそうだなあ。

 

 

▼映画の感想『ブルータル・ジャスティス』を書きました。メル・ギブソン主演の長いサスペンス。価値観の変化についていけないおじさんの悲哀を感じる。地味でグロさもあり、観る人を選ぶ作品だと思います。私はとても良かったです。

 

 

 

▼劇作家の宮沢章夫さんがうっ血性心不全で65歳で亡くなった。さびしい。さびしい。さびしい。