玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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父と野球

▼心の古里、業務スーパーへ。業務スーパーのいいところは、たまに食べられない物を売っているところ。当たりはずれが楽しい。道中、業務スーパーゆるキャラを考える。ぎょむぎょむくん。歩くたびに「ギョム‥‥ギョム‥‥」という不穏な効果音が鳴る。衣がセメダインみたいな唐揚げを投げつけてくる、など。

 

買い物から帰るとエレベーターで蚊が待ち伏せている。毎回2、3か所刺されてしまう。憎し。ここで待ち伏せしてれば人間がくるというのをわかっている。私より3倍賢い。

 

 

 

▼甲子園が始まった。父は甲子園の入場行進が好きで、よく寝転がってテレビ中継を観ていた。人間が一糸乱れることなく揃って動く様子が楽しいのだとか。北朝鮮マスゲームも好きなのでは。独裁者気質。自分は団体行動が嫌いなくせに勝手なもの。今年の開会式はコロナの影響で、学校名が書かれたプラカードを持った女子高生と代表のキャプテンだけが入場行進をした。チームメイトの姿はない。この光景を観たら、マスゲーム大好きな父はさびしがったかもしれない。独裁者もコロナには勝てない。

 

子供のころから甲子園を観ていたせいか、球児たちは全員年上に見えてしまう。不思議なもの。今年もテーマ曲の『栄冠は君に輝く』が流れた。あれを聴くと感傷的な気分になり、学生時代の夏休みを思い出す。小学生の頃は両親とも仕事で家におらず、夏休みは朝からゲームができるのでうきうきしていた。

 

毎日、友人Kを呼んで『がんばれゴエモン からくり道中』『スペランカー』『ダウボーイ』などをやっていたのを思い出す。ゴエモンははじめてカセットの容量が2メガビットを超えた商品で、その容量を売りにしていた。当時、バイトではなくビット表示にしてたのは単位にメガを使えて、容量を大きく感じさせようとしたのかもしれない。現在ではビットで表示することはほとんどない。バイトになおすと、1メガビットは1メガバイトの1/8で、2メガビットというのは256キロバイトになる。ちなみにスーパーマリオはわずか40キロバイトで作られているのがすごい。スマホやデジカメで写真を撮っても1枚で4000キロバイト(4メガバイト)ぐらいにはなってしまう。スーパーマリオが100個分入るってすごいな。

 

今や100ギガを超えるゲームも珍しくない。隔世の感がある。当時はセーブがないから、5時間も6時間もぶっ通しでやってクリアするしかなかった。ゴエモンは、島から島に飛び移る海の面で落ちてよく死んだ。攻略サイトなどもないわけで、ひたすら手探りでやるしかない。金も情報もセーブ機能もないので1本のカセットを何か月もかけて遊ぶことになった。ヒマと執念がすごいな。

 

小中高とダラダラ過ごした私と違い、父は高校一年の頃、野球部だったと聞いたことがある。父は背が低かった。野球部で低身長というと、長打はあまり打てないが粘って塁に出て、盗塁をしたりして敵チームを攪乱するイメージがある。ところが父は低身長で足も遅かった。長所がない。で、ある日、監督から「おまえはもう来なくていい」と野球部をクビになったという。

 

プロ野球ならともかく、学生の部活ってクビになるのだな。そこに驚いた。部活は勝利だけが目的じゃないと思うんだけど。努力や協調性を学ぶという意味がありそうだが、監督が勝ちにこだわる人だったのかな。しかも、父の通っていた高校は野球の名門校ではなく、毎年県大会の一回戦で負けるような弱小校だった。そんな弱いとこならクビにしなくてよくない? 楽しくやろうよと思う。それでもクビになるのだなあと感心した。恐ろしいほどド下手だったのだろうか。

 

卒業して何十年たっても、父のところには同窓会の知らせと一緒に寄付のお願いが届いていた。同窓会にはちょくちょく参加していたが寄付は一度もしなかったという。それというのも野球部をクビになった、その恨みからだとか。もう当時の監督いないでしょうよ。けっして恨みを忘れない人間である。背だけではなく器も小さかった。さすが。『栄冠は君に輝く』を聴いて、父のことを思い出しました。

 

 

 

▼小説を書いた。SFのショートショートみたいな長さ。書き終わって「なるほどねえ‥‥」となる。自分でどこに着地するかわからずに書くのが楽しいのかもしれない。

 

 

 

東京03『入居日』

 

このコント、好きでたまに観てしまう。