玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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エアコン泥棒

▼酷暑。今日は溶けずに家に帰ってこられたら、それだけで偉い。各地で39度を超えるすさまじい日だった。いつの間にか、日本て人が住めなくなっているのでは。しかし、昼にはマスク姿でジョギングする人を多く見かけた。走ることが習慣になっていて、走らないと気持ち悪いのかもしれない。狂気のマラソンマンたちを見た。なぜか女性はいない。

 

 

 

▼部屋に虫がわく女こと、虫ちゃん。田舎育ちというだけあって、おおらかでのんびりした女の子。しかし、昼休みに温厚な虫ちゃんが見たことのない剣幕で怒っていた。電話をきると「終わった‥‥なにもかも終わった‥‥」といい、机に突っ伏した。話をきいてみると、電話の相手はしばらく前に別れた同棲相手だという。

 

同棲期間が長かったため、家具の所有権で少しもめたのだとか。少しというわりに「このひとでなし! 人類の敵!」っていってましたけど。別れた彼はテレビを持っていくことで話がついていたが「テレビはいらないからエアコンにした」と勝手に変更し、虫ちゃんが働いている間、電気工事の友人をつれてきてエアコンを取り外したのだとか。エアコンなしの賃貸物件もあるのだな。しかし、この酷暑にエアコンなしはきつい。

 

「ああ‥‥エアコンないとか地獄。テレビいらねー。‥‥っていうか、テレビ観ないし、普通に邪魔なんですよねえ」そうぼやいていた。虫ちゃんの話を聞きながら、テーブルの端ではSさんが悲しそうな顔をしていた。Sさんの前職は家電メーカーで、彼はテレビを作っていたことがある。以前、彼からソニーが初めてテレビを発売したときの裏話などを聞いていた。テレビに愛着がある人なのだ。虫ちゃんが部屋を出たとき、Sさんは前にテレビを作っていたから、彼の前であまりテレビを悪くいわない方がいいよと伝えておいた。

 

虫ちゃん、Sさんに悪いと思ったのだろう。戻ってきたとき、なんの脈絡もなく「そういや、私、テレビ好きなんですよねー」と話し出した。いや、おまえ、急すぎるだろうよ。さっきまで「ずっとテレビ観てない。邪魔だし、暑苦しいし、いいことがない」と、こき下ろしていたのに。気をつかうにしても、もうちょっと自然にお願いしたい。暑すぎて脳がバグったかと思われそう。

 

 

 

▼映画の感想『コリーニ事件』を書きました。硬派なミステリー作品。ドイツは第二次大戦中の凄惨な事件を、いまだによく映画化している。忘れてはならないことながら、こういった重苦しいテーマの作品で客が入ることもすごいですね。

 

韓国ドラマ『マイ・ディア・ミスター ~わたしのおじさん~』を観終わった。映画はたまに観ますが、韓国ドラマはこれが初めてだと思います。暗く地味な始まりかたですが面白かったです。おじさんの人柄が高潔ですばらしい。久しぶりにちゃんとした大人をみた。