玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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ボーナスはどんぐりで支給される

▼梅雨。墨を流したように黒い空から雨が降ってきた。今年はよく降る。

 

Amazonプライムでボクシングの井上尚弥×ノニト・ドネア戦を観る。1ラウンド終了間際、井上選手の右が入ってダウンを奪い、そのダメージが抜けない間に攻め続け、結果は2ラウンドTKOで井上選手の圧勝に終わった。最初のダウンは、井上選手が左ジャブを出すフェイントをかけて、ドネア選手の注意を一瞬そらして右を入れている。私がズブの素人ということもあるけど、通常のスピードでみても左のフェイントがまったく見えなかった。何度巻き戻して見ても全然見えない。ラウンド間のインターバルで流れたスロー再生をみて初めてわかる。

 

普通のボクサーなら、あのフェイントは速すぎて引っかからないように思える。素人には、何が起こったかさえわからないという。ドネアが優れたボクサーだからこそ反応してしまい、そのおかげで右をもらってしまったように見えた。

 

ボクシングはよくわからないけど、不思議と引きつけられて観てしまうときがある。団体競技はたまに国の威信をかけてとか、絶対に負けられない戦いがそこにあるとか煽られるけど、ボクシングにそういう臭いを感じたことはない。純粋にどっちが強いか決めようというシンプルさを感じる。今回、敗れたドネア選手は井上選手を祝福し、堂々と両手を突き上げ、そのあと観客におじぎしていた。敗れたときに人の美しさが出る。すばらしい試合だった。

 

 

 

▼6月といえばボーナスの時期である。私にはないが。

 

知人が、といっても50歳を超えるおじさんたちですが、久々に会ってお酒を飲んで陽気になり、阿佐ヶ谷駅前で「ボーナス! ボーナス! ボーナス! ボーナス!」と手拍子しながらはしゃいでいたところ、見知らぬおじさんに「うるせぇ! こっちはボーナスも出ねぇんだよ!」と頭を殴られたという。笑ってしまった。特にケガはなかったそうでなにより。

 

この「ボーナス! ボーナス!」とはしゃいでいたおじさんたちだが、実は業績が悪くて今年もボーナスが出なかったのだ。それでやけになって叫んでいたら、からまれて殴られたという。何をやっているんだ、おまえらは。ボーナスも出ないのに。

 

この知人の会社では先日、総務の女性社員が辞職して、スタバの店員(バイト)に転職したらしい。うーむ、いくら傾いてる会社とはいえ、給料がドングリ10個とはいえ、スタバのバイトを選ぶものなのか。一応、年金や保険もあるだろうに。カフェのバイトってたしかにちょっと人気ありそうな仕事だけど。わりと競争率も高いときく。きっと私は入れないだろうな。一度ぐらいカフェで働いてみたい人生だった。呪文のようなわけのわからない注文を客から聞かされて「は?」と聞き返したい人生だった。