玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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長い物

▼ゴリラ部長が「終わったら連絡たのむ」といって去って行った。去り際に、親指と小指をたてて、間の三本の指はたたむ、手で電話の形を振って顔の横にあてる仕草をした。新入社員2号くんが「めっちゃチャラくないですか?」と驚いていた。ゴリラ部長は電話の意味で使ったが、2号くんはあの仕草をラッパーとかDJのポーズとして受け取ったらしい。 

 

以前、小学生が学校に置いてあるダイヤル式の黒電話の使い方がわからなかったというのをラジオで聴いたが、受話器というのがもう見かけないものになっていくのかもしれない。みんなスマホが当たり前で、ゴリラ部長がラッパーと勘違いされるのも仕方ないのかもしれない。2号くんにはゴリラ部長は「元からかなりチャラい。若い頃は8股が当たり前で毎日違う女の子と遊んでいた。今、仕事をがんばっているのは養育費のため」と吹き込んでおいた。 

 

最近、でたらめな嘘をつくことに興奮するようになってきた。いつこの嘘がバレるのかたまらん‥‥ハアハア。性癖にゆがみを覚える初夏。 

 

 

 

▼映画はあいかわらず観ている。ウィル・スミス、トミー・リー・ジョーンズの人気作『メン・イン・ブラック』の続編『メン・イン・ブラック:インターナショナル』がやっていた。今回は女性メンバーも加入する。メン・イン・ブラックという組織名について「(女性もいるのに)『メン』てどうなの?」というジョークが入っていて時代を感じさせる。いろんなところでコンプラアンスについて考えさせられる。 

 

今、ちょうどコンプライアンスについての資料を読んでいるが「相手が嫌悪感をもよおす性癖の開示」という項目がある。どういうことかよくわからなかった。具体的に何をさすか考えていたが、飲み会などで「ドSだから」「Mだから」という言葉を聞いたことがあるが、そういうことなのかな。今後、ああいった場合「セクハラにあたる」といえるわけか。なるほどー。場が凍りつく飲み会になりそうだけど。こういうのも行き過ぎると、勝手にマナーを作り出すマナー講師みたいになってしまうので難しいところ。 

 

 

 

▼pixivでゲームの二次創作を書いて公開しているけど、pixivは閲覧数などが見られるのでどの作品がどれだけ人気かがすぐわかる。地味なタイトルより、派手で人目をひくタイトルの方が閲覧数の伸びがいい。ずっと前から謎だったのが、やたらに長いタイトルの小説だった。検索して出てきたタイトルが長かった。 

 

 

「王女に仕えた万能執事、わがままが度を越したので帝国で最強の軍人に成り上がり無双する~誰からも評価されず毎日姫のわがままに付き合わされた不遇の執事はいつの間にか大陸屈指の実力者になっていた~」 

 

 

頭おかしいんかい、と思ったが人目を引こうとしているうちに、こういう進化を遂げたのかもしれない。いまに本文より長いタイトルの小説が出そう。 

 

 

で、相変わらずせっせと小説を書いていて気づいたことがあった。ちょっとシリアスで長めのものを書いたのだけど閲覧数がまったくない。私が書いたものでよく読まれているものが1000単位で、不人気な作品は60しかない。60て。これはひょっとしてサブスクと同じことが起きているのかな。以前に、サブスクというサービスが始まってから音楽の形が変わったということを聞いたことがあった。80年代の音楽は前奏が平均20秒程度だが、それが2019年には5秒程度になっているという。頭を聴いて気に入らなければすぐに離脱される。それを防ぐためにどうしても前奏は短くなる。文章でも同じなのかな。頭の2ページぐらいで派手な展開にするか、魅惑的な謎、不思議な現象を出すなどしないと、読み手を引っ張れないのかもしれない。 

 

 

学生の頃、ミステリーの新本格ブームというのがあった。ああいった作品は緻密に舞台設定を積み上げていくので、なかなか人が死なないことがある。綾辻行人の何かは忘れてしまったけれど200ページぐらい読んで、まだ何も事件が起きてなくて、さすがに「誰か早く死んでくれ~」と思った。ホラーだけど、小野不由美の『屍鬼』は辞典みたいに厚い。上巻は淡々と村の様子が描写されるだけでなにも起こらない。これ面白くなるのか? と思ったが後半は怒涛の面白さだった。上巻の平穏さが下巻の恐怖を引き立ててくれたのかも。 

 

 

サービスの形が作品の形を変えてしまい、作品に影響を受ける人間も、その影響を受けるのだろうか。今後、我慢強くない人、パッと見ただけで判断する人が増えていくのかな。B'zの『LOVE PHANTOM』は前奏が1分20秒ぐらいあるけど、今の時代だとヒットしないのだろうか。いや、そんな単純な話ではないか。B'zには信用があるから、ファンはちゃんと聴くのだろう。ただ、いろんな分野で作品の頭の部分が短くなるという現象は起きているのかもしれない。