玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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自意識にからめとられて

▼たまに裸足で外出する夢を見る。そのときの気持ちは「なんで靴履いてないんだろ。恥ずかしい」というものだった。悪夢ではないにせよ、とても落ち着かない気持ちにさせられた。夢占いのサイトを見ると、裸足の夢は「財産運、恋愛運の低下、健康上の不安」などと書いてあった。まず「運」というのが本当に存在するのか、そこのところから怪しい。そして運と夢がどういう原理で結びつくのか。占い師はその知識をどこで得て、証明はされたのか。などと意地悪なことを思ってしまう。夢占いにムキになる中二のへりくつ小僧が出現した。

 

問題なのは占いに根拠がないと思いながら、それでも「裸足の夢」を検索までして占いサイトを見た自分では。すなわち、私、心が弱っているのでは。

 

 

 

▼野球が開幕し、相撲は若隆景が優勝した。若隆景と優勝決定戦で対戦した高安は32歳で、年齢のこともあって優勝のチャンスは少ないだろうからと高安を応援していた。いい勝負だった。

 

中日は岡林や石川という新戦力を積極的に起用している。立浪新監督になり、今年は少し目があるのかな。又吉投手がソフトバンクに引き抜かれた穴は大きい。許すまじ。私はソフトバンクの解約を考えている。

 

 

 

小林麻耶さんが海老蔵さんについてYouTubeで暴露しているというニュースを読んだ。私は小林麻耶の自伝を読んで、日記に小林麻耶のことを書いたことがある。花田優一さんのことを書いたこともある。二人ともいい人に思えた。

 

これは私に人を見る目がないというより、人はいかようにも変化するということなのだろう。面接で人を採用するとき、前の会社ではかなり真面目に書類に目を通していた。求職者が一生懸命やっているのだから、こちらもきちんとした基準をもっていないと失礼だと考えていた。でも、いつからか、人の成長や変化の可能性を面接だけで見抜くのは不可能だし、見抜けると思うのは傲慢ではないかと考えるようになった。人はいい方にも悪い方にも変わる。全部見通すことが可能なら、逮捕されたり、問題を起こすような人を誰も採用しない。しかし、ニュースを見れば毎日どこかで逮捕者は出ている。人事は、見抜けていないことになる。そういうものなのだ。生きていればいろんな人に会うし、どうなるかなんてわからない。

 

そうなると一定の条件を満たすなら、あとは感じがいいとか、気が合いそうとか、そういった勘で採用するようになる。実はそういうことでいいのかもしれない。googleは人を採用するとき、一緒に働きたいかどうか、その部署の人間に決めさせる取り組みもしているという。

 

 

 

▼いつも読んでいる日記で「僕の心のヤバイやつ」という漫画が紹介されていた。自意識過剰の中学生市川くんの物語。

 

なんで中高生の頃はあんなにも自意識過剰だったのだろう。周りが見えなくて自分を特別な人間と信じ込み、目立ちたいのと、ほっといてほしいのと、矛盾した感情が同居していた。誰でもそんなところはあるのかもしれないけど、あまりにも痛々しい。そんな日々を思い出す作品でした。

 

自意識過剰で思い出したことがある。高校の頃、中学時代の同窓会に参加した。少し会ってないだけで、女子はずいぶん大人びて見えた。あまり話したこともないSさんという女子が、私に「ジュース、一口ちょうだい」といった。ジュースを持つ手が震えた。それだけのことで緊急脳内会議が招集され、頭は真っ白になった。

 

「こここれは‥‥うわさに聞く、あの伝説の『間接キス』というやつなのでは?」

「まさに。存在が確認されていないツチノコネッシー、間接キス、の間接キスである」

「存在したのかー。奇跡」

「しかし、Sさんは数多くいる男子の中から、なぜ僕を」

「それはたまたま近くにいたからだろ」

「バカな! これは脈ありということなのでは」

「もし仮にだ。おまえがジュースを飲みたいと思っても、いきなり女子に『一口ちょうだい』といえるのか」

「いえるわけがない」

「清水の舞台から飛び降りるような覚悟がなければ」

「だとすると、Sさんの行動というのは、これはつまり‥‥」

「いや待て。それはモテない人間の思考。本当に他意なく、喉がかわいただけということもある」

「むしろそれが当たり前だろう」

「だがたとえ他意なしとはいえ、嫌いな人間のジュースをもらおうとは思わないはず」

「それはそうだ!」

「つまり‥‥」

「可能性はゼロではない!」

「ない!」

 

などと頭は忙しく、結果、私は石になった。中二の魂が宿った石像となってぎこちなくジュースを渡し、二言三言、言葉を交わしたはずだが何も憶えていない。当然そこから何の進展もなかった。そもそも連絡先すら知らない。

 

それから時間が経ち、大学受験を迎えた。A大学の受験日、駅から出ていたA大学行きのバスにSさんの姿を見つけた。彼女もA大学を受けるのだ。結果発表があり、私はA大学に合格した。だが同時にB大学にも受かっていた。A大学は滑り止めで受けていた。B大学の入学手続きをしてくれるという親に「ちょっと考えたいことがあるから待ってほしい」と頼んだ。

 

家からはB大学が近く、A大学は滑り止めだったので行く理由がない。だが、A大学には間接キスをした人がいる。枕に顔をうずめ「きゃー! どうしよう!」と足をバタバタさせて悶絶した。そもそもですね、SさんがA大学に合格したという保証もないし、他に合格してそちらに行くかもしれない。仮にSさんがA大学に来たとして、私とどうにかなるなどないだろう。もう付き合っている人がいるかもしれない。それを親に「ちょっと考えたいことがあるから待ってほしい」って。おまえ、よくその頭で合格したな。「待ってほしい」じゃないんだよ、バカ。

 

それでも後ろ髪を引かれる思いでB大学へ入学したのを憶えている。本当に自意識というのは厄介だし、正直なことを書くなら、まだ治っていない。

 

 

 

▼映画の感想『底知れぬ愛の闇』を書きました。ギクシャクした夫婦のサスペンス。登場人物の行動についていけず、イライラする作品。