玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

このブログの内容はすべてフィクションです

おごられるときの態度

東日本大震災から11年経った。まだ2500人を超える行方不明者がいるという。せめて遺体が見つかればあきらめがつくというご家族も多いだろう。ニュースはロシアからウクライナへの軍事侵攻のものがほとんど。そんな中でプロ野球のオープン戦がいつもどおり始まったり、YouTuberとなった宮迫さんの焼き肉屋「牛宮城」の話題があったり、温度差がものすごいな。花粉症もやってきた。杉を憎悪する季節がやってきた。

 

 

 

▼仕事を手伝ってもらった24時間くんにお弁当をおごる。特別な弁当というわけではなく、近所の弁当屋のもの。デザートはコンビニのスイーツ。24時間くんは体育会系でいちいちリアクションが大きい。「このスイーツ、うまっ! ちょっと一口食べてみてくださいよ!」と迫ってくる。寄るな、寄るな。コロナが流行っているから食事ではなく弁当にしたというのに。おまえのような奴がコロナを巻き散らす、と追い払う。

 

自分が人からおごってもらう立場だった時、こんなにかわいくなかったと思う。もちろんお礼はいうし「美味しい」とはいうものの、おごった側は張り合いがなかったのではないか。斜に構えて、簡単には美味しいといわなかった気がする。嫌なやつだよ。当時の上司や先輩に申し訳なく思う。

 

リアクションの大きい人というのは、気をつかっているんじゃないかと疑ってしまう。私や先輩は、たまに社長におごってもらうことがあった。先輩は「いや~、うまいっすね~! 社長、さすがにいい店しってますねえ」などというものの、帰り道二人きりになるや「全然たいしたことなかったな」と平気でいう人だった。社長は先輩がかわいかったらしく、よくいろんな所に連れて行ったらしい。私はといえば、気をつかって食事するぐらいなら一人で牛丼でも食べたほうがいいという人間だったので、誘われないほうが嬉しかった。さらに苦手な人におごられるぐらいなら「ありがとう」とお礼をいうのが嫌だから、自分で払ったほうがいいとすら思っていた。かなり性格に難がある。

 

国立大のクイズ研出身の出木杉くんにおごったときは、リアクションがまったくなかった。ちゃんとお礼はいうものの、美味しいんだか美味しくないんだかまったくわからない。表情がない。感想がない。リアクションがない。黙々と召し上がる。20年前の自分におごっている。だが、なんとなく彼の気持ちがわかるような。わざとらしく「美味しい」というのも、おべっかを使っているようだし、それはそれで誠意がない。美味しいときだけ美味しいといえば、それでいいじゃないかという。

 

でも、おごる側が楽しいのはリアクションが大きい人なのだな。それがようやっとわかった。24時間くん、バカだからなあ。リアクションの大きいバカは愛される。出木杉くんはいろいろと苦労しそうな気がする。いろんな人がいていいし、みんなあまり気を使わずに自由にやればいいんだな。

 

出木杉くんから最近読んだ本を教えてもらう。立花隆の「田中角栄研究全記録」だった。20代前半なのにずいぶん渋い趣味ですこと。私の中のルールに、同じ作品を複数の人から薦めてもらったときはとりあえず試すというのがある。田中角栄研究は最近、BSドキュメンタリーで観て、最相葉月の本に出てきて、出木杉くんからも薦められた。これは3人に薦められたのと同じでは。何かが私を角栄に駆り立てる。そんな春。

 

雑な終わり方だよ。

 

 

 

▼映画の感想『アーカイヴ』を書きました。ロボが心をもった近未来のSF。ロボが独自の思考や価値観をもつかと思いきや、メンヘラちゃんになってしまった。