玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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若い人に教えてもらう

▼「なにとぞよろしくお願いします」という言葉を当たり前に使っていたが、ふと「なにとぞ(何卒)」の「とぞ」ってなんだろうなと思う。「なに」は「何」だろう。「なんとか」や「どうぞ」のニュアンス。「とぞ」がわからない。検索したら書いてあるのだろう。しないで生きていく。

 

ずっと前に先輩が取引先にメールを書いたときに「何卒お願いします」と書いたら「高卒ですが、よろしくお願いします」と返ってきた。唐突に学歴をたずねる人になってしまったな。

 

 

 

▼先日の日記でMP3プレーヤーを買ったことを書いた。隣席のTさんにも新しいMP3プレーヤーの自慢をした。これで私も文明人の仲間入りだとはしゃいでいた。するとTさんが申し訳なさそうに口を開いた。なんでも、今の若い人はMP3プレーヤーは買わないのだとか。みな、スマホのアプリでストリーミングで音楽を聴き、気に入った曲があれば「いいね」や「お気に入り」にしておく。そうするとそのアーティストの他の曲や関連ある曲が表示される。ストリーミングはダウンロードと違い、ファイルそのものは端末に残らないため、容量を圧迫しない。もうそれで十分なのだ。私は泣きながら窓からMP3プレーヤーをぶん投げた。

 

もう一つ教えてもらったことがある。ZOOMなどのビデオ会議で、取引先や上司に理不尽なキレられ方をしたとする。そのとき、怒っている人の頭をマウスで「よしよし」となでてあげるらしい。そうするとこちらの怒りも消えるのだとか。ライフハックである。おばあちゃんの知恵袋の裏に書いとこ。

 

 

 

▼隣席のTさんから24時間くんのことを聞く。24時間くんはアルバイトの管理をしているが、たまに対応が気になるという。バイトのAさんがミスをしたときに「Aちゃんはかわいいから許しちゃう」ということがあるとか。「これ、どうなんでしょうねえ」というTさんの目はすわっている。「どうなんでしょうねえ」といったとき、人はたいてい怒っている。

 

セクハラというほどひどい事をしているわけではないように思う。Aさんはかわいいから許すがBさんはブサイクだから許さないという扱いをしているわけではない。Bさんに対して24時間くんは普通に接している。冗談なのだからいちいち目くじらを立てるなといえば、そういう話にも思える。明らかなセクハラやパワハラであれば、きちんと注意できる。難しいのが境界線上の言葉なのだろう。隣席のTさんは気になるが、当の24時間くんは気づいてもいない。

 

Tさんは私が24時間くんと仲が良いので、私からそれとなく注意してほしいと頼まれた。Tさんが注意すると、自分がAさんのように扱われないことへの嫉妬だと思われるのが嫌なのだろうか。こういう注意も難しい。注意する側が「そこまで悪いことではない」と思っていると、注意もフワフワしたものになってしまい、受け取る側も結局何を注意されたのかわからない。

 

なので、24時間くんには「会社はキャバクラじゃねぇんだぞ。アホかボケカス死ね、お前!」って、Tさんがいってましたと伝えた。Tさんから後日連絡があり「24時間くんにものすごい勢いで謝られたんですけど、なんて伝えました?」と訊かれる。私はただ忠実にTさんの心の声を伝えただけなんです。ただの伝書鳩。クルック―。

 

 

 

▼映画の感想『ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド』『Hysteric Betty』を書きました。『ゼイ・シャル~』は第一次大戦を描いたドキュメンタリー。監督は『ロード・オブ・ザリング』シリーズのピーター・ジャクソンです。貴重な証言がまとめられており、当時の雰囲気も伝わってきて見応えがあります。『Hysteric Betty』は田舎から上京してきたアラサー女性の映画。ほぼ素人で作られている変わった作品でした。