玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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▼今年のM-1グランプリは錦鯉が優勝した。錦鯉のまさのりさんて50歳なんですね。あきらめないで続けてきた精神力がすごい。健康にも不安が出てくる歳だろうし、この先の人生を考えたとき、夜中に叫び出したいような不安にかられたのではないか。ここでM-1を獲れたからよかったものの、本当によく続けてきましたねえ。いつまで続けていいのか正解がわからないから難しい。この先、60歳や70歳でM-1を獲る人も出てくるのだろうな。片方、車椅子に乗っていることもありうる。相方の骨壺をもって出てくる人もありうる。

 

歳をとるとネタの選定も難しいのかなと思う。決勝のネタは合コンで、始まったときに「50歳のおじさんが合コンてずいぶん痛々しい」と思ってしまった。だが、ツッコミの渡辺さんが「何が合コンだ。寄り合いって言え!」と強めにいったので、安心して見られた。あれで気持ち悪さが消えた。M-1を獲ってからがスタートなのだろう。50歳にしてスタート。これからはそういう人たちも大勢出てくる。

 

 

 

▼インド人のツイッターを見ていたら、日本語の丁寧表現について書いていた。「お出口というのにお入口とはいわない」とあった。たしかに。どうしてか答えられない。

 

体にしても「お体」はいいとして、手は「お手」か「おてて」ということもある。「おてて」は子供に対してなのかな。足は「おあし」ではなく「おみあし」。「み」はどこから来たんだ。「御御御付」(おみおつけ)と同じ「み」の付け方なのかな。顔のパーツにしても、耳・鼻・口は「お」を付けてもいい。目はあまり「お目」とはいわないが「お目が高い」「お目汚し」というときだけ「お」が付くのだろうか。眉・頬・顎・額には付かない。「額」(ひたい)にはつかなくても「おでこ」という言葉はある。むしろ「でこ」とはあまりいわない。ルールが複雑すぎる。私は日本人だけど、おあたまが悪いのでついていけない。

 

 

 

▼プリンを仕込んだ。午後に食べよ。ほほほ。面倒なのでカラメルを作る手順を省略したら5分ぐらいで仕込める。

 

 

 

▼伯母はある宗教に入っているので輸血を受けて手術ができない。無輸血で手術できる病院を探している。今日、新しい病院に行ってできるかどうか確認してくるらしい。病院を変わるたびに検査をしなければならず、ずいぶんと時間もお金もかかってしまう。最新の検査データが欲しいという気持ちはわかるものの、検査した時期がそれほど前でないなら病院間でデータを共有してほしいのだけど難しいのかな。もう今からだと年内の手術は難しいように思う。

 

私に信仰はないものの、伯母はなぜか私のことをずいぶんかわいがってくれる。ひょっとしたら、娘と関係が断絶し、そこで空いた穴をふさぎたい気持ちがあるのかもしれない。娘の代わりという。いきなり嫌なことを書いてしまった。さておき、私は伯母に勝手に恩を感じているところがある。

 

これは以前にも書いた話なのだけど。母が生まれたとき、家はだいぶ貧しかったという。子供もずいぶん多かった。祖母は母を生んでからすぐに工場の仕事に戻った。だから母の面倒をみるのは伯母の仕事だった。母が生まれたとき、伯母は5つか6つだと思う。子供にしてはずいぶん責任が重い。

 

午前中、誰が母をみていてくれたのかはわからない。近所の人なのかな。伯母は昼に小学校から戻ると、祖母が働く工場まで母をおぶって行く。母にお乳を飲ませなければならないのだ。今のように粉ミルクもなく(あっても買えなかった)、母乳を保管する冷蔵庫もない。工場まで往復4キロぐらいある道は子供にはなかなか大変だろう。赤ん坊の体重が3、4㎏だとしても、伯母も小学校1年ぐらいだからせいぜい20㎏あるかないか。自分の体重の1/6程度の人間を背負って歩くのはきつい。60㎏の人間だと10㎏背負って歩くようなもの。しかもその背中の人間は生きている。転んだりしたら大変なことになる。

 

お乳をあげるのだから「今日は面倒だからやめ」と、サボるわけにはいかない。で、工場までの道中、伯母が母を背負って歩いていると、地元の子供たちにからかわれていじめられるのだという。小学校1年の子が苦労して赤ん坊を運んでいるのに、よくそんなことできるなと思う。あまりにひどくて笑ってしまった。そんなやつら、ぶん殴ってやればいいんだよ、本当に。伯母が許しても私が許さんからな。いつかその村、燃やしに行きたい。

 

とにかく伯母はそのようにして母の世話をしてくれ、母は無事に育ち、おかげで私もぬくぬくしていられるということで、勝手に伯母に恩を感じている。たとえ伯母が毎回、賞味期限切れの食品を私のところに持ち込んでもよいのだ。伯母は何をしてもよい。今日こそ病院が決まるといいな。