玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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魅力

▼知人のSNSを監視して、その生活が自分よりうまくいっているのを見て妬むのが趣味の卑屈くんが嬉しそうに寄ってきた。彼が嬉しそうなときは、周囲になんらかの不幸があるとき。実写版疫病神を撮るときは是非主演で。

 

卑屈くんと話していたら、新入社員の出木杉くんの調子がどうも良くないのだという。「調子が良くない」という割に笑いをこらえきれないのがさすが。ゲス山ゲス夫に改名したほうがいいと思う。出木杉くんは所属部署での人間関係がうまくいってないのだとか。出木杉くんは難関国立大のクイズ研卒というエリート。「○○大っていってもね。そういうの仕事じゃあんまり関係ありませんから。まあ人間関係ってのは誰しもが通る道でね~」と、本当に嬉しそうな卑屈くん。

 

私はゴリラ部長に卑屈くん入社時のことを聞いたことがある。アルバイトに舐められ、人間関係に悩んでいた卑屈くんは、それ以上舐められたくないと思ったのか「俺は以前、自衛隊にいてあの頃は相当ヤバかった」と、バイトの前で嘘エピソードを語ったのだという。あるとき、卑屈くんの自衛隊嘘エピソードが上司の耳に入って卑屈くんは呼び出された。入社時の書類と異なり、経歴詐称になると問い詰めたらしい。卑屈くんはそこで「あれはバイトに舐められたくなくて‥‥経歴詐称などでは‥‥」と涙ながらに謝罪したという。あまりのダサさに笑ってしまった。その卑屈くんがねえ。

 

ともあれ、新入社員はいつでもうまくいかぬもの。みんな、自分だけは何もなかったみたいな顔してますが、必ず何かやらかしている。自分を省みれば本当に駄目だったなあと思う。今でもあまり変わらないけれど。

 

 

 

▼卑屈くんとは違い、営業でみんなから好かれている50代半ばのおじさんがいる。この人が不思議と人気がある。私もこの人には「なんかパンダみたいですよね~」と失礼な口をきいてしまう。そうすると照れながら「やめてよ~」というのだけどとても愛嬌がある。

 

人の魅力ってなんだろう。容姿や若さが大きく影響することは否定できない。でも、それだけではない何かがある。年収が高いとか、学歴があるとか、そういったことも結婚相手とすれば重要な条件になりうるが魅力の本質とはまた違う。男は度胸、女は愛嬌などというが、男も女も愛嬌が重要なのではないか。

 

久しぶりに会ったパンダさんは「こっちに用事がなくてなかなか来れなくて~」と言った。その場にいたべつのおじさんから「用事がなくても来てよ~」と言われていた。おっさん同士イチャイチャしていた。どんだけ好かれてんだ。特に容姿が整っているわけでもない。出世しているわけではないが責任感があって、頼りがいがある。あまり人の悪口も言わないし裏表がない印象。自分のやり方を押し付けず、心が開いているように見える。そこがいいのかな。

 

勉強というのはテストを受ければ点数が出るし、成果が可視化されやすい。でも、魅力というのは客観的な測定が難しい。数字で出ない。学校の勉強はよくできても魅力的じゃない人はたくさんいる。努力の方向が難しいから、魅力をあげていくというのは難しいように思える。顔、スタイル、声、服装などの外面的要素、社会的地位、年収、職業、学歴などの肩書的要素、人当たりの良さ、愛嬌、仕草、頭の良さ、才能などの内面的要素、これらが混ざって魅力を構成しているのだろう。

 

社会的地位や学歴などの肩書的要素があっても魅力的ではない人がいる。それは結局のところ、利益がこちらに還元されにくいからなのかな。たとえば「私、年収1億円なんですよ」という人がいたとする。そう自慢されても「ああ、そう」しかない上に、きっと妬むだろうからマイナスの印象すらある。魅力的な笑顔だとか、愛嬌は、その人が存在するだけで報酬が与えられる。

 

凡人が魅力を上げるには、つまるところ良い人になるしかないのでは。私は全身整形でパンダになることを考えている。

 

 

 

▼映画の感想『ノクターン』を書きました。姉に嫉妬する妹のホラー映画。姉妹って大変ね。