玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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祭りの終わり

▼新しい電子レンジは来るし、オリンピックは終わる。

 

20年使った電子レンジが壊れ、新しい電子レンジがやって来た。デンコと名付けた。さっそく冷凍ホタテの解凍、冷凍たこ焼きやコーヒーの温めなど縦横無尽の活躍をする。弱小チームにやってきたその日から、いきなり4番を任される外国人選手のよう。デンコよ、チーム(食卓)の未来はおまえにかかっている。

 

 

 

▼オリンピックが終わっていた。JNNのオリンピック世論調査では「開催してよかった」「どちらかといえば開催してよかった」を合計すると61%が開催賛成だった。なるほど。そういうものなのだな。私は開催反対だったけれど競技は楽しんで観ていた。今回は空手、ロッククライミング、BMX、スケートボード、サーフィンなど新しい種目もいくつか増えていた。

 

BMX(自転車)やスケボーは選手が興奮しやすいのか、競技の直後、自転車やスケボーをぶん投げたり、ヘルメットを脱いでおもいきり蹴飛ばしたりする人もいる。気が狂ったみたいで面白い。道具大切にしなさいよ、ほんとに。BMXは技が多彩で驚かされる。やってみたくなる。私がやったら即死しそうだけど。

 

今一つよくわからないのが空手だった。組手はまだわかるとして、形(型という表記ではないのも何かこだわりがあるのだろう)という種目がよくわからなかった。戦わずに演武で勝敗を決める。相手を倒すという目的ならば直接対戦して強さを決めればいい。形が美しいことと強さが本当に結びつくのだろうか。とても美しい演武をする人がいて、その人が強くなかった場合どうなってしまうのだろう。解説の人がいくら「キレがある」「重心がぶれない」「安定している」などと褒めても、格闘技は実際の強さが重要だと思うのだけど。

 

格闘技は強さ以外に他の価値があるのだろうか。正確さ、優美さを競うとすれば、それはダンスであって空手である必要はないのでは。その疑問が解消しないせいか、ちょっとモヤモヤした感じで観てしまった。顔芸がすごい人が勝った。迫力が違う。

 

 

 

▼田中慎弥さんの本を初めて読んだ。『田中慎弥の掌劇場』という掌編集。星新一さんのショートショートよりも短く、ショートショートショートともいえるような作品。驚いたのは原因と結果のあいだに因果関係がないこと。正確にいえば因果関係はないことはないのかもしれないが、読者にはまったく説明されない。

 

あるセックスレスの夫婦がいて、夫が外出した時に雲を見て、それからセックスレスが解消したというような話。雲については説明されない。もうまったく何が何やらであり、こういった話が何篇も収録されているというか、こういった話しかない。どうなってるんだ。ところが読み進めていく間に、著者の独特なユーモア感覚が感じられて、いつの間にかするする最後まで読んでしまった。意味やトリック、原因と結果などはないものの「そんなこともあるかもなあ」と思った。

 

以前よりも本でも映画でも意味の追及に興味を持たなくなった。「そういう気持ちになることもある」とか「こういう雰囲気いいな」とか「色遣いがいい」とか、わりと素直な気持ちで受け取ることが増えてきた。空気をそのまま楽しめる。そんな自分の心情に適合した作品だった。私は好きですが、多くの人はつまらないと思うかもしれません。

 

 

 

 

▼映画の感想『ザ・ボート』を書きました。ボートに閉じ込められて四苦八苦するだけのお話。よくこれだけで映画を撮りましたな。観る修行という感じの作品。