玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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痛々しい

▼ミニトマト(左のプランター)のイチローとジローは今日も元気だった。ミニトマトだけだとさびしいので、なんとなく鉢植えも撮ったら鉢植えがメインみたいになってしまった。

 

 

空いていたプランターにもミニトマトとバジルの種を蒔いた。これで今年の夏は‥‥ほほほほほ、楽しみ。

 

 

もう「ミニトマト レシピ」で検索している。

 

 

 

▼本を読んでいたら達磨がでてきた。中国禅宗の開祖だが、日本だと寺に売っているダルマのほうで有名。絵や彫像になっている達磨はたいてい目がギョロギョロしていて迫力があり、愛嬌のあるものもある。

 

 

達磨は壁に向かって9年座禅を続けていたところ手足が腐って落ちてしまったという言い伝えがある。また、座禅の最中に眠くなるので達磨は瞼(まぶた)を切り落として眠気を払おうとした。その瞼を捨てたところから一本の木が生えてきて葉が茂った。この葉をちぎって食べると、たちまち眠気が払われ、修行も完遂して達磨大師という名僧になれたのだとか。中学生のどうしようもない自慢を聞かされている感じで微笑ましい。

 

今日2時間しか寝てないとか、勉強せずにテストでいい点取ったとか、不良とケンカになって3対1だけど勝ったとか、その延長として「座禅に夢中で手足腐ったわ。ま、全然余裕だけど」の達磨である。実に香ばしい。こんな達磨に憧れて弟子入り志願をする者もいる。神光(じんこう)という僧侶は決意を示すために自分の左ヒジから先を切り落とし、達磨に入門を求める。イタイイタイイタイ。もう、そんなヤツ断ったら絶対刺してくるじゃん。頭おかしいのしかおらんのか。

 

ふと中学の頃の痛い話を思い出した。痛々しい盛りの中学二年、放課後のクラスには部活で遅くなった私とYという男子生徒の二人がいた。それまでYとは同じクラスになったことはなく、あまり親しくもなかった。帰ろうと思ったところ、Yから「ちょっとちょっと」と呼ばれ、少し雑談をした。Yは自分の左手首の内側を指し「俺の秘密教えてやろうか」と言う。左手首のところにはバンドエイドが貼ってあった。「なに?」と訊くと、Yはもったいつけるようにゆっくりとバンドエイドを剥がした。Yの手首の内側には黒のマジックで“死”と書いてあった。

 

Yは不良というわけではないけれど、ちょっと気の短さを感じさせるところがあった。親しければ「何やってんだよオイ」と言えるが、これはきっと笑ってはいけないやつなのだと思った。「舐めるヤツは許さねえっていう決意表明みたいなもんだな」とYは言った。私は「ほおおおおおお」と感心して、その場を後にした。Yについては、触れたらいかんヤツだな、あれは、と思いました。

 

後日、放課後にまたYと二人きりになることがあった。Yはまた私を呼ぶと自分の左手首を指し「新しいの見るか?」と言う。新しいのって、と思うが、せっかくなので見せてもらうことにする。Yがペリペリとバンドエイドを剥がすと、そこには黒いマジックで“ユメ”と書かれていた。漢字の“夢”は画数が多いからマジックだと潰れてしまうのだろう。それで片仮名の“ユメ”にしたのだろうけど、その気の使い方が妙に面白くて笑いが込み上げてきた。だが親しくもないので笑うわけにはいかず、我慢して教室を出た。

 

廊下を歩いているときに急におかしくなり「“ユメ”ってなんだよ‥‥カタカナで“ユメ”って‥‥書くか、普通‥‥」と、くつくつ笑っているうちにいつの間にかお腹を抱えて笑っていた。そこへ英語の先生が通りかかり「どうした、楽しそうだな?」と声をかけてきたので「先生‥‥いや、人生が‥‥楽しくて!」とゲラゲラ笑いながら言ったら「おまえはいいなあ。気楽で悩みがなくて」などと呆れた様子だった。こっちはテンションが上がりきっていたので「うっせえ! おまえの授業めちゃくちゃつまんねぇからな!」と言い返しそうになって、慌ててやめたのを憶えている。どうかしていたな。ほら、中学生は情緒がめちゃくちゃだから。なんの話でしたっけ。

 

 

 

▼映画の感想『ファイティング・ファミリー』を書きました。WWEの女子レスラー ペイジとその家族を描いた映画。プロレスファンの人は面白いかも。そうでない方にも楽しめる作品だと思います。