玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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悲しみの歌

ミニトマトの栽培キットを買ってきた。これで3カ月後は美味しいミニトマトが食べられるはず。水やりなどを考えると、買った方が安いのだろうな。とはいえ、何かを育てるのはいいこと。なにより植物は人を裏切らない。絶対に裏切らない。植物だけは。

 

何かあったみたいな書き方ですが特に何も。ちょっと書いてみたかった。ベランダで栽培キットの準備をする。まず培養土にコップ4杯ほどの水を含ませてよく混ぜます。混ぜたら土をプランターに入れ、指で軽く土に穴をあける。涙の形をした1ミリほどの薄黄色いトマトの種を2、3粒入れて土をかぶせる。あとは発芽を待つだけ。ほほほ。楽しみ。

 

作業中、隣家のベランダの戸がガラッと開いて誰かが出てきた。隣家の住人は近所と接触をもちたくないらしく、こちらが洗濯物を干したり取り込んだりしているときは絶対に出てこない。避けているようなのだ。そういう人もいるだろう。珍しく声が聞こえた。男の声のようだった。旦那さんなのだろう。何か歌っているようだった。耳を澄ますと小声の歌が聴き取れた。

 

「家でタバコが喫えなくて悲しいな~。働いて~働いて~毎日残業でがんばっているのに~。タバコを喫うときに追い出されて~悲しいな~。浮気もしないのに~ゴルフの回数も減らされて~小遣いも減らされて~な~んで家でタバコ喫えないんだろうな~」

 

悲しいオリジナルソングを聴いてしまった。トマトの成長に悪影響がありそう。息を潜めてベランダから戻った。

 

 

 

▼verizon CM

5Gになるとラグがなくなって快適になるぞ、というCMだけど、ラグがあったほうが楽しそうだなと思ってしまう。猫かわいや。

 

 

 

▼映画の感想『ガーンジー島の読書会の秘密』を書きました。ごく普通の恋愛映画。これは男女によって感想が異なる映画かもしれない。映画の本筋と関係ない話だけど、人は自分の立場を離れて物事を考えることは不可能なのかなと思う。映画は小説家の女性が主人公で、彼女はある金持ちと婚約していたが、田舎に住む養豚業の男性に恋をして結局は彼を選ぶことになる。金持ちは振られる。

 

この金持ちは特に悪い人ではなく落ち度があったわけでもない。むしろ親切なんですよね。彼が振られるとき、私が男性だからかこの人に感情移入してしまった。女性ならばそういう観方をしないのではないか。そう考えるとフラットな視点で映画を観ることは難しいのかもしれない。

 

ある国の映画を観ていたとき、日本が悪く描かれており、本筋とはほとんど関係なかったのだがそれだけで何かちょっと嫌な気がした。これも私が日本人だからで、日本人という立場を離れて観るということは難しいだろうなと思う。人はさまざまな属性を持って生きている。どうしても自分が属する立場に縛られて物事を考えてしまう。あまりに立場にこだわれば、自分の属する側をなんでもかんでも肯定し、反対の立場に立つものを嫌い、それが差別や偏見に繋がることもあるのかもしれない。

 

柔軟にならないといけないなと思う。歳をとれば思考は体と同じように固くなる。まずは体の中心に生えているこの棒を高枝切りバサミで切り落としてから映画を観ようと思う。なんについて書いているのかよくわからなくなってしまった。たまに迷子になる。最近は無属性の人について考えている。無属性の思考は面白いのか、それとも無味乾燥なものになってしまうのか。