玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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臭気

▼新茶を頂いた。新茶に合うものはと考えてきな粉をまぶしたお団子を作る。ほほほ。

 

 

水の量が多かったのか形が崩れてしまったが味は美味しい。団子ぐらい簡単に作れると思っていたけれど、実際にやってみるとうまくいかない。それもまた楽しい。ちょっとうまくいかないときにどうやったらうまくいくか考えるときが楽しい。プラモデルにも似ているかも。作っている時が楽しくて、完成したときにはさして興味がなくなっているような。とはいえ、団子は完成したとき食べられるからプラモより偉い。

 

 

▼ゴリラ部長が奥さんに「部屋からおじさんの臭いがするから、なんとかして」と言われた話を聞く。悲し。なんか解決法ないかと訊かれたが、死ぬしかないのでは? 解決した。

 

しかし、ゴリラ部長も40代だから部屋からおじさんの臭いがしても当たり前に思える。部屋から女子高生の臭いがしたら事件の予感しかない。奥さんが言うには、以前は枕とか服だけだったのに、今では部屋全体から臭うらしいのだ。

 

ゴリラ部長は真剣な顔で「ちょっと嗅いでみてくれ」という。「アホか。鼻がもげるわ」と逃げるが「頼むから! 頼むから! ちょっとでいいから!」と執拗に口説かれる。あまりにも悲壮感ただよう顔で言うから、かわいそうになって嗅いだがなんの臭いもしなかった。どういうことでしょう。蛇は自分の毒では死なないというが、これは私もおっさんだから、ゴリラ部長の臭いに気づかないだけだろうか。つまり、私も同じ臭いをさせていると?

 

思えば、男はだいたい中学生ぐらいから臭くなってくる。体育の時間、高校の更衣室は独特のすえたような臭いがした。あの臭いはなんだか目にくるんだよ。その臭いが40代になって強まるのだろうか。根本的な解決法がないような気もする。食生活で油ものを減らすとか、運動をするとかかな。しかし、それで臭いが消えるとは限らない。そもそも臭いは中学生ぐらいから強まっているような気もするし、ということは臭いはおじさんの臭いではなく、中学生の臭いではないか。奥さんもおじさんの臭いは我慢できなくても、中学生の臭いなら我慢できるのではないか。発想の転換。

 

奥さんに「あれはおじさんの臭いではなく中学生の臭いだ」と説得してみるのはどうかと提案したところ、ゴリラ部長からは「は? 頭大丈夫か?」と言われた。憐れむような目で見るんじゃないよ。この方法がダメなら、奥さんの鼻をスマホで殴って効かなくするしか方法が思い浮かばないのだけど。臭いというのは難しい。

 

いい歳をした男二人で、臭いを嗅げ! 嗅がない! とキャッキャキャッキャしてたら、机の向こうから視線を感じた。隣席のTさんがすごい顔でこちらを見ていた。鬱陶しいのはわかるが何もそんな顔しなくてもいいじゃないですか。私たちは人を殺したわけではない。ただ異臭を放つ悲しい生き物なのだ。

 

 

 

▼映画の感想『透明人間』『世界一キライなあなたに』を書きました。『透明人間』は今まで観た透明人間ものの中でもっとも面白いスリラーでした。『世界一キライなあなたに』は四肢麻痺の人との恋愛物語。気持ちが前向きでないときに書いたため、少し暗めの感想になってしまった。