玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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引っ越しとコーヒー

▼知人が引っ越した。テレワークが導入されて出勤日が減った人は職場の近くに住む理由もない。以前、彼の家は職場から徒歩15分という近さだったが今度は電車で2時間という。ずいぶん思い切りましたな。広さは倍以上なのに家賃は半分以下になったという。コーヒーが好きな人で、ブルーマウンテンが飲みたいと言っていたことを思い出した。「それぐらいなら引っ越し祝いに贈るよ」ということで、コーヒーショップをのぞいてみたらブルーマウンテンが高くて驚く。

 

200グラム8000円て。マジすか。なにこれ末端価格が200グラム8000円て。麻薬じゃん、と思いました。コーヒー好きには常識なのだろうけどこんなに高いとは知らなかった。200グラムではすぐなくなるので、人に贈るとすれば600グラムぐらいはあったほうがいいだろう。そうすると24000円か。やっぱり麻薬じゃーん。アホか。奴がそんなに味がわかる人間とは思えない。雪印コーヒー1リットル130円でいいのでは。間違いない。

 

 

私たちが普段口にするブルーマウンテンは、ブルーマウンテンブレンドなので他の豆が混ざっている。ブルーマウンテンだけだとどうしてもその値段になってしまうらしい。奴にはブルーマウンテンはまだ早い。ブルーマウンテンブレンドで十分だ。ブルーマウンテンとは自分が成功した暁に自分の金で飲むものだ。そうだそうだ。うんうん。などと納得しブレンドのほうを買った。

 

自分用にはカロシトラジャというのを買ってみる。以前はトラルコトラジャが美味しくてたまに飲んだけど、最近はすっかり見なくなった。ここ半年ほどブラックでコーヒーを飲み続けてきた。ブラックで味がわかるようになったかというとそんなこともなく、ただ土を水で溶いたものを飲んでいるような味気無さだった。飲むのやめればいいのに。カロシトラジャをブラックで一口飲んだところ、やっぱり苦かった。砂糖とミルクを程よく入れて飲む。おいし。これだよ、これ。私はコーヒーではなく砂糖とミルクを飲んでいるだけではないか。

 

 

 

▼引っ越しということで思い出したが、両親もよく引っ越したらしい。というのも父は若い頃、タイヤ会社に勤めており、タイヤを運ぶことから会社にはトラックがたくさんあったという。それで休日などに会社の若い人にトラックを出させて、ほとんど金をかけずに引っ越ししていたらしいのだ。若い人の人権。とんだブラック企業である。当時は珍しいことではないのだろうなあ。

 

私が産まれた場所はよくわからないのだけど、ずいぶん交通量が多い場所で空気も汚かったらしい。1970年代はまだ公害があった。父が「こんなところで子供を育てるのはかわいそうだ」と調布の多摩川住宅に移ったという。父にも私をかわいく思っていた時期があったのだな。父とは軋轢があったので、その話を母から聞いたときには嬉しく感じた。

 

以前、母から聞いた話を思い出してみたが、母は父と一緒になってから少なくとも10回以上、20回まではいってないかもしれないがかなりの回数引っ越したという。海外にも住んでいる。警察から追われてるのかな。若い頃は家財道具も少なく、気軽に引っ越したらしい。で、ちょっと待てよと思ったのだが、父が引っ越したのって私のことを思ったというより、単に引っ越しが趣味だからではないか。なんなら引っ越す理由に使われた可能性もあるな。それもまた父らしい。

 

 

 

▼映画の感想『伊豆の踊子』を書きました。吉永小百合、高橋英樹が若い。爽やかでさびしい青春映画。良かったです。