玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

このブログの内容はすべてフィクションです

ホラン千秋

▼講談師の神田伯山さんとホラン千秋さんのラジオを聴いたら面白かった。神田伯山が面白いのはわかっていたけれどホラン千秋について何か思ったことはなかったな。ホラン千秋について考えたことのない人生だった。とても厳格なお父様のもとで育ったそうで、テレビを観すぎていたことから家ではテレビ禁止になり、もし観たい番組があるときは事前申請しなくてはいけない仕組みになったという。大変だな。ホラン千秋のせいで他の家族もテレビ禁止になったとか。他の家族にしてみれば巻き込み事故もいいところ。そのためにラジオを聴くようになったという。ラジオ、特に深夜ラジオを聴くという人はそれだけで信用できる気がする。

 

ホラン千秋が神田伯山のラジオを聴いていたというので驚く。伯山のラジオは面白いのだけど基本的に人の悪口しか言っていない。私も聴いた日には「ああ、私の悪の面が出てしまった。ろくでもない人間になってしまう」と後悔している。あれはひと月に一度でいい。どんどん悪い人間になる。そんなラジオを愛聴しているホラン千秋はどこか歪んでいるのではないか。伯山とのラジオでもそれが垣間見えた。3年振りぐらいに急に連絡してくる友達がいて、だいたいそういう人は結婚か出産をしていて「どうかした?」と訊かれるのを待っている、自慢したくてしょうがないらしい。ホラン千秋は絶対に自分からは「どうかした?」と訊かないという。どうかした待ちの女を意地でも許さない女。猫の額ぐらい狭い心でがんばっているホラン千秋を応援していく。

 

さっそくホラン千秋ウィキペディアを見た。家では高校時代のジャージを着ているとか、大学時代に学園祭に参加したことがない、休日は家から出ないなどのエピソードが並んでいる。本当かどうか怪しい。アイドルがファンを増やそうと「年上が好みです。お父さんぐらいまで大丈夫」と言うのと似ている。非モテ層みたいなのをファンとして取り込みたいのでは。

 

ブログを見たら自作の料理をアップしていた。なるほどと思いました。これは本物かも。今や誰でもスマホを使って、加工したり、文字を入れたり、なんとかきれいに撮ろうと工夫する。ホラン千秋の撮り方は十年前のおっさんなんですよね。上から撮っただけ。情報だけ伝わればいいという。おっさんがアップしたラーメン画像でも、もっときれいに撮っている。いよいよホラン千秋を応援していく心が固まった。

 

 

 

▼会社で打ち合わせ。卑屈くんに初めての部下ができたらしい。出世しましたな。

 

卑屈くんの下についたMくんに指導する様子をみていた。Mくんは二十代半ばの青年。卑屈くんが画面を指しながら「タクシー運転手はまず最初に指導員から病院の位置を教わります。それで、Mくんに最初に憶えてもらいたい大事な点がこれで——」と前置きをしてから説明に入っていた。なんだかみょうな前置きだなと聴いていた。

 

するとMくんが話をさえぎり「今ってカーナビ積んでるから、タクシーの運転手も病院の位置は憶えないと思いますよ」と言った。確かにそうかもしれない。「いや、それはそうだけど‥‥たとえだから。病院の位置ぐらい大事なことだから」「それを言うなら、一番最初に憶えるのってカーナビの使い方じゃないですか」と冷静なMくん。正論で殴られてる人を久しぶりに見たな。

 

卑屈くんとあとで話したところ悔しがっていた。「舐められないように賢そうな話をぶつけて尊敬されたかったのに」とのこと。どうしてそのたとえで尊敬されると思った。賢いというか、なんだか変なのが上司になったな、と思っているのでは。今後の二人の対決を見守りたい。煽っていきたい。

 

 

 

▼映画の感想『パラサイト 半地下の家族』『トクソウ』を書きました。『パラサイト』は貧困問題を描いたサスペンス。面白かったです。『トクソウ』は特捜部の内部、強引な取り調べ手法を描いたサスペンスドラマ。こちらも良かったです。