玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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おごりのルール

▼里芋の唐揚げを作った。なんだか今一つの出来でがっかり。失敗にはなんらかの原因があって、原因を突き止めれば一つ失敗をつぶすことができ、次回の成功の可能性を上げることができる。それはわかっているが、それはそれとして「面倒だからまたやりたくない」「もう失敗したくない」という心の問題はある。面倒なので次の料理にゴー。理屈より感情にしたがって生きてこ。

 

 

▼コロナで出前の形も変化というニュースを見た。東南アジアあたりの話だったと思う。いろんなレストラン、居酒屋など10店舗ぐらいが集まって、出前専門の調理基地ができたという。お客は和洋中こだわらず好きな料理を注文できる。自分が和食、友人が洋食を食べたい場合、店舗が違ってしまうと出前金額に満たないために注文できなかったが、そんなことがなくなる。

 

注文サイトも便利になっていた。普通の出前サイトは、店側が月額もしくは注文に応じて手数料を払う。それを無料にしている。無料にしたことで当然、客にも安く商品を提供できる。このサイトは銀行が出資して作っている。銀行はどこから金を回収するかというと、料理代が入金される口座をこの銀行の口座で作ってもらうとのこと。日本でも流行らないかな。

 

 

▼忘年会中止の連絡が入る。今年は仕事も友人同士の集まりもなくなるだろう。毎年、忘年会をやっていた店だが、席を入り口付近にされることが多く、出入りも多くてめちゃくちゃ寒かったんだよな。コートが脱げなかった。あそこは換気が良いのでコロナも感染しないのでは。なにせ寒すぎる。みな、凍えながら飲み食いしていて1時間でお開きになるという。

 

以前の会社では、最後の業務日は忘年会というわけではないが社長におごってもらった。年越しも兼ねてかソバ屋が多かった。私などは小市民なので(ふむ、社長が特上天丼、専務がテンプラ盛り合わせ、先輩がアナゴ丼‥‥ということは私は山菜ソバぐらいか)などと最後に注文を決めていた。それがあるとき、新入社員の女の子が堂々と「特上天丼で!」と真っ先に頼んだので、のけぞった。忖度、予定調和を破壊する女。いや、それでいいのだ。だって社長は「みんな、好きなの頼んで」と言ったのだから。この女子社員の出現で、時代は変わったのだと痛感した。それでもなんとなく上の人より安いのを頼んでしまうんだよな。小市民気質が直らない。

 

これはべつに正解がある話でもないのだろうなあ。高い物を頼まれて喜ぶ人もいる。そういう人に気を遣って安い物を頼むと「俺に甲斐性がないと思うのか」と怒ることもあるから難しい。おでこに「高い物頼んでもよし」と書いといてくれるといいのだけど。以前、一緒に仕事をしたお調子者のF君は平気で高い物を頼める人だった。

 

社長のおごりで会食をしたときも「社長、このワイン(けっこう高い)いっちゃっていいすか? あざーす!」と、チャラかった。私もF君に食事をおごったとき、3万円ぐらいかかったことがある。酒が高かったのかもしれない。加圧シャツ1300円を買うのに3日悩む私だ。食事に3万かー、とうなった。

 

後日、F君と話したとき「高い物を頼むと『コイツ、かわいいな』みたいな感じでけっこうかわいがられるんすよ。だから、べつに頼みたくなくても、あえてのときがありますね。あえて。しゅんさん(私のこと)にも、あえていかせてもらいましたー。あざーす!」などと、いけしゃあしゃあと言う。頼みたくて頼むならいいが、あえてで頼むんじゃないよ。変なテクニック使わないでほしい。テクニックは、それがテクニックとわかったとき、一気にマイナス評価になる。

 

あの日は駅からタクシーを使わず、1時間半歩いて帰ったのだ。「あえて」などいらん。「おまえ、腹が立つから一発ビンタさせろ」「いやですよ~」と駅のホームで揉めた。「もぉ~、そんな言うんだったら、かる~くですよ。かる~く『こらっ!』程度ならいいすよ」と言うので、全力で肘がこわれるぐらいの勢いで思いっきり叩いた。バチーンという音がホームに響き渡り、周りの人がなにごとかと振り返っていた。F君は頬を抑えてうめき声をあげ、それがおかしくてゲラゲラ笑ったのを思い出す。あれ、楽しかったなあ。ビンタで人を殺してやろうと思ったんだよ。

 

 

▼映画の感想『フォーリナー / 復讐者』を書きました。老いたジャッキーががんばります。ジャッキーがよれよれになっている。