玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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テレビショッピング

プレミアムフライデー。それは上司の家に放火しても、あまり怒られない日。そしてハロウィンも終わり11月が来た。

 

今年のハロウィンはコロナのこともあり、扮装をして渋谷に集まった人は少なかった。そもそもテレビが取りあげなければ人は集まらないけど、テレビはわざわざ取材に行っている。自粛を促しているようで煽っている。誰かが騒ぎを起こせば儲けものというか。ときにテレビのいやらしい根性が透けて見える。

 

今日はマフラーをするかどうか迷う気温。夜になると少し冷え込み、カブと鶏肉のクリームシチューを作る。カブは程よく煮込まれ、甘味がでていた。鶏肉はすぐに火が通るので、ルーを入れてから煮れば十分。肉を噛めば柔らかく、みずみずしくて美味しい。寒くなって嬉しいのは、温かいものが美味しいこと。ほほほ。

 

温かいものといえば、志ん朝の落語『二番煎じ』がとても美味そうに猪鍋を食べるのだ。ネギを食べる仕草がねえ、お腹空いてくる。YouTubeにあると思いますので興味ある方は。夜は少し落語を聴いた。今までは志ん朝圓生、枝雀、小さん、米朝と死人ばかりを聴いていた。死人ていうのもどうかと思うけど。そろそろ生きている人に手を出していきたい。

 

 

 

▼ケーブルテレビで野球を観ているとスポンサーはだいたい、しじみ(二日酔いの薬)、関節痛にきくサプリ、自動車保険、テレビショッピングで占められている。テレビショッピングでは女優の熊谷真実さんをよく見かける。

 

テレビショッピングという仕事が芸能人にとってどういうものか、よくわからない。人気が落ちてきた芸能人の避難所か、アルバイト的な位置にあるのかな。地上波のトーク番組では高いテンションで話していた人が、気乗りしない様子でやっている姿も見かける。そもそも高収入の芸能人が、一般人が使うお手頃価格の商品に本気で感心することも少ないだろうし、リアクションが少ないのもしょうがない。おおげさに驚いてみせるのもわざとらしい。だから振り切れずに、曖昧に感心したような態度をとる人もいて、それはそれで「恥じらっているな‥‥」と好感がもてる。

 

だが、熊谷真実である。熊谷真実は全力でいく。トーカ堂の枕の宣伝でも、目を見開いてオーバーなリアクションを連発し「私、今まで使っていた枕、全部すてました!」と言っていた。嘘をつけ、嘘を。他社の枕の宣伝をしたら、トーカ堂の枕も勢いよくぶん投げるだろう。熊谷真実はそれができる女。熊谷真実の振り切れっぷり、応援していきたい。

 

 

 

▼他者のモチベーションを下げる困った人がいる。横柄で上から物を言ったり、細かいことに執着したり、一緒に作業をする人たちの労働意欲が低下してしまう。今、やっているキャンペーンのために、もう一人だけ手配してくれるようゴリラ部長にお願いしていた。やってきた人が、ちょっと問題ある人だったという。こちらからお願いしたこともあり、こりゃどうしたものかと思っていた。

 

今まで円満にやってきていたチームだったが「あの人と作業するのは」ということになってしまった。能力はあるのだけど、物の言い方や性格の話となると難しい。注意しても直らないし、応援はいらないので、元の部署に戻ってもらうことになった。しばらくしたら彼の上司がやってきて、本人が納得してないから申し訳ないけど彼に詳しく説明してくれないかという。「いや、だってわかるでしょ?」「わかるけどー。本人ああいう性格だから、俺が言っても駄目なんだよお」「そんな面倒なの嫌ですよお」「俺だって嫌だい嫌だい」という、お互い40超えているとは思えない醜い攻防の末、私が説明することになった。ヨヨヨ。

 

スキルや技術の話ではなく性格の話というのは、本当に難しい。能力不足ならば本人もあきらめがつくが、人格を否定されたようで納得がいかないだろう。こういったデリケートな話は信頼関係が構築されていればこそだが、なにせ信頼関係ゼロでするのはしんどい。

 

彼は能力が高い。だけど能力やスキルというのは道具でしかない。その道具をどう使うか。自分の意見をごり押しするとか、上から物を言うとか、そんな使い方ではなくチームを助けるために使ってほしい、もう少し柔らかく物を言ってほしい、ただそれだけのことなのだ。恵まれた能力は彼のものであるが、彼だけのものでもないように思う。運良くその能力を獲得できる環境にいただけで。だったら、それを周りのために使ってもと思うのだけど。彼の理屈はシンプルで、仕事なのだからお互いの好き嫌いなどは関係なく、ただ仕事だけしていればいいというものだった。私も彼の意見には同意できる。しかし、ただ仕事をすることに支障が出ているのが問題なのだけど。

 

彼は能力と性格を完全に分離して考えている。でも、性格というのも実は能力に含まれるのではないかと思う。今までも彼とうまくいかずに部署を変わったり、会社を辞めてしまった人もいた。彼の性格が会社に損害を与えたのだから、性格が能力のマイナス要素として見られても仕方ないのではないか。彼は性格と能力は別と主張し、辞めた奴らが根性がないだけという。そういう物の言い方が問題なのだと腹が立ったが、わかってくれないのだなと思う。

 

今こうして4人の人間がどうすべきか頭を悩ませており、この時間はなんの利益を上げてもいない。4人×時間分のお金だけが発生しつづけている。現に君の性格によって損害を出し続けていて、それについてどう考えているのか、性格が業務に大きく影響しているのでは、と言わざるを得なかった。彼の上司が悪くなった雰囲気をやわらげようと「彼も根は悪くないけど誤解されやすくて」と間に入ってくれたが「家族じゃないから根まで知る必要はありません。上辺だけの関係をうまく築いてほしいだけです」と言ってしまい、雰囲気は最悪となった。全員、引いたのがわかった。一番性格悪いの私なのでは。もう‥‥もう‥‥ほんとに‥‥。みんなに愛されて生きていきたいのに。かわいい、かわいいと、パンダのように甘やかされたいのに。性格最悪じゃんかあ!

 

結果、とりあえず彼は元の部署に。チームのメンバーに顛末をつたえると「やったー!」とハイタッチしていた。いや、あなたたちね‥‥。もうこれでキャンペーンの失敗は許されなくなったのです。人は足りないが100点の成果を出さねばならない。「これからはミスをした人間は、一本ずつ指を切り落としていきます」と宣言した。「はーい」だって。滅茶苦茶になめられている。私は本気だ。熊谷真実のネットショッピングで高枝切りバサミを注文した。

 

 

 

▼仕事を通じて人間として成長すべきだとは、父がよく言っていた。私もそう思っている。でも、それを他の人間にも要求するのは正しさの押し付けにすぎないように思う。成長したところで何があるのかといえば何もない。ただ、お互いが少しだけ気持ちよく仕事できる程度だろう。お金を稼げればそれでいいのでは、といえばそれもそうだと思う。彼もチームのメンバーも気持ちよく働ける適した言い方があったのではと考えている。

 

 

 

▼コメントが2件ついたので赤飯と尾頭付きの鯛を焼いた。ありがたや。