玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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違いがわかる男

▼コーヒーに砂糖を入れなくなってから一週間ほどたつ。ブラックで飲んでいる。砂糖の危険性をうったえた映画『砂糖の甘くない話』を観て感化された。単純。以前は一日三杯、砂糖とミルクをたっぷり入れたコーヒーを飲んでいた。砂糖を入れなくなったからといって何か変わったわけではない。以前もそれほど摂ってなかったから、体調に影響があるわけじゃないのかな。とはいえ、しばらくは止めてみるつもり。

 

 

しかしですよ、さびしいのだ。砂糖がないととてもさびしい。今まで私はコーヒーを飲んでいたのではなく、砂糖とクリームを飲んでいたのかもしれない。では、今飲んでいるブラックコーヒーとは何か。土である。土をお湯に溶いたものとそんな変わらない。あああああああ! 砂糖‥‥砂糖が摂りたい! 血管に注射したい! これはもしや、中毒?

 

ブラックで飲んでいるから、少しはコーヒー本来の味がわかるようになったのだろうか。コーヒー豆の専門店で買い物をすると、店員さんが試飲を勧めてくれる場合がある。今まではブラックが苦手で、小さなコップを渡され「お試しください」と言われても、ありがた迷惑だった。なにせ、あの小さなところに砂糖もクリームも入れられない。コーヒーの味などわかっちゃいない。私はお湯に砂糖とクリームを溶かして飲んでいればいいのだ。

 

せっかく持ってきてくれたので「爽やかな口当たりですね」などと言ってみるも、そもそもブラックを飲めないわけで「にがー」としか思わない。だが、店員さんはコイツはコーヒーにうるさい奴と思ったのか、別のコーヒーも入れてくれて「こちらもどうぞ」などと渡してくることがある。私は私でコイツに舐められてはいけないという小市民意識を発揮し「さっきのより、コクがあってまろやかですね」と聞いたふうなことを言ってみるものの「にがー」としか思ってない。さっきのより「にがー」としか言えない。たぶん土をお湯に溶いたのを渡しても同じ反応をする。舌が小学三年生なので。

 

だが、私もブラックを一週間ほど飲み続け、違いがわかる男になった。店員に違いがわかるところを見せつけようじゃないのと、コーヒー店に立ち寄った。ちょっと動機がおかしいが。コーヒー豆の棚のところをウロウロしていたが一向に試飲を持ってこない。おかしいなと思っていたら「コロナのため試飲の提供は中止しております」とある。そうなのか。でも、試飲中止ってそんなに関係あるのかなあ。飲むの、一瞬ですけどね、飲んで「にがー」ってなるだけだから、こっちは。

 

飲めなかった。コーヒー店からの帰りに芝生があるので、土を掘り返して飲んでりゃいいんだと思います。なにせ私は違いがわかる男。コーヒーと土の違いがわかる男。

 

 

▼映画の感想『サリュート7』を書きました。ソビエト時代、実際に起きた宇宙ステーション サリュート7号の事故を映画化。ゲームウォッチなども出てきて懐かしいですね。ハリウッド映画のような作りに驚きました。面白かったです。