玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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カセットテープの修理

▼以前、お世話になっていた会社に。仕事の話を終え、会長と雑談。いつでもいるんだな、会長。

 

「そうだ。おまえ、カセットテープ直せそうだな」と三波春夫のテープを渡される。テープが再生されなくなったという。振ってみるとカラカラ音がする。なぜ私に直せると思いましたか。理工系でもないし、もはや九九の七の段も怪しい人間なのに。一応、ネットで修理動画をみると意外となんとかなりそう。分解すると、テープを巻き取るハブ(中心の軸部分)が破損しており、それを他のテープから移植することで直った。子供の頃は駄目になったら直そうともせずに捨てていたけれど、今はYouTubeを見ると誰かが情報をあげていてくれる。ありがたい。物を修理すると自分が少しだけ有用な人間になった気がする。物を直すというのは、とても心に良い。独特の楽しさがある。

 

デッキから流れる三波春夫の歌声を聴くと、会長は嬉しそうに目を細めた。それが会長の笑顔を見た最後でし‥‥生きている。下手すりゃ、私の方が早いのでは。ご壮健でなにより。これからもどうぞお元気で。

 

 

 

ダイソーに寄ったらマスクが普通に売られていた。100円ショップまで商品が行き渡り、ついに普通に買えるようになった。そういえば政府からはまだマスクが届かない。私の住むところは日本ではないのか。そうかも。今からマスク2枚を配るよりも、配布を中止してそのお金を病院などに配ったほうがいいように思える。世間も、今更マスク2枚もらってもという状態なのでは。

 

緊急事態宣言も多くの地域で解除され、だんだんと元の日常に近づいている気がする。うれし。もうちょっとで東京も緊急事態宣言が解かれる望みがでてきた。隣席のTさんとビデオチャットで話す。スターバックスでも持ち帰りの営業が始まったと教えてもらう。でも、開店した直後にスタバに行く人もなんだかなと思う。それをSNSにお上げになるんでしょ。「スタバ不足でつらかったー」みたいな。スタバのコーヒーが飲みたいというより、スタバがないと駄目な自分をアピールしているだけなのでは。コーヒーと、土を水で溶いたやつの区別がつくか怪しい。などと思いつきの悪口を言っていたら、Tさんが「私も今日行きました」と言う。

 

「へ、へええええ。そ、そう‥‥」としか言えない。だいたい私など何か考えてしゃべるのではなく、思いつきが口から出るわけだから悪気などない。スタバいいじゃないの。ねえ。そりゃ、その日に行きますよ。やってるんだから。入らないわけがない。私も行く。おでこにスタバのタトゥーだって入っているし心は常にスタバと共にある。今度、スター爆三郎に改名しようと思っているんです。などと言おうかなあと思うものの、何も言えない。

 

気まずいまま通話を終えて今に至る。私も『あつまれ どうぶつの森』などやって心の平穏を取り戻したい。

 

 

 

▼映画の感想『1987、ある闘いの真実』を書きました。1987年の韓国。軍事政権のもとで行われた警察による拷問死事件から民主化までの道のり。面白かったです。