玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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闇医者

▼エンジニアのWさんのお宅に寄り、グラフィックボードやメモリなどをもらう。家にあるパーツと組み合わせれば1台PCができるかも。ほほほほ。

 

WさんがPCのパーツを出してくれるのを待つ間、娘のナオちゃんと話す。小学2、3年ぐらいなのかな。しっかりした女の子。シルバニアファミリーというのだろうか、動物の家を持ってきていろいろ説明してくれる。洋服も家具も細かいところまで凝っている。人形の名前や設定など、一通りの説明を受けた。

 

 

「今日はどうしました?」「え‥‥?」「今日はどうしました?」

察しの悪い奴だな‥‥という表情のナオちゃん。どうやらお医者さんごっこが始まっていたようである。渡された茶色のクマが私なのだろう。「今日は‥‥今日は、ちょっと熱があるみたいで」「診てみましょう」

ナオちゃんは、横にしたクマの胸に聴診器を当てるような仕草をしている。しばらくすると、難しい表情で「‥‥手術しかないですね」と言う。先生、聴診器で診ただけで手術って、ヤブじゃん。というか狂人の可能性も。

 

「横になってください」クマはすでに横になっていたが、先生はシルバニアファミリーの家から注射器を取り出すと、クマに突き刺す仕草をした。「麻酔です」と重々しく言う。患者の同意なく、手術は始まっていた。そのあとにナオちゃんは笛を出してきて、ぴーひゃららと奇妙なメロディーを演奏しだした。先生の手術って、現地の呪術師がやるやつでは‥‥。それ、麻酔いらなくない? という私の疑問をよそに手術は終わった様子。

 

「治りました。手術代一千万円です」「先生! ちょっと高くないですか」ブラックジャックのような闇医者に頼んでしまったらしい。「そんなに払えないですよ」と泣きつくと、ナオちゃんは首を振りながら「わかりました。では『死』です!」と断言した。ちょっと笑ってしまった。せっかく治したのに死て。

 

WさんがPCのパーツを手に戻ってきた。Wさんによると、ナオちゃんはお医者さんごっこにはまっているらしく「食べ過ぎてお腹が苦しい」と言えば即手術、検温してもらうと毎回「120度」と答えるらしい。人は42度で死ぬ。

 

闇医者のところから無事生還し、ハムトマト卵サンドを作る。美味し。楽しい日だった。また診察してもらいたい。だが、死の危険がある。