玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

このブログの内容はすべてフィクションです

年賀状

▼髪を切りました。行った先で「え? ちょっと、どうしたんですか?」と言われる。どうもしてない。髪を切っただけだ。髪を切った人に言ってはいけない言葉の1位は「どうしたんですか」だと学んだ。悲しい。

 

最近、ちょっと髪が薄くなってきたように思う。私の親族を観察するに、遺伝的に禿げるのは避けられないだろう。父方も母方も男はもれなく禿げている。遺伝的に逃げ場がない。そうであるならばですよ、まだ髪のあるうちに対策をしておきたい。もし、私が近い将来、禿げるならば潔く丸坊主にしたい。だからといって今いきなり丸坊主にしたらネオナチみたいな感じがして危ない。周囲もびっくりする。徐々に徐々に短髪にして気づいたら何もなかったというのが理想。周りを慣らしていく作戦。

 

だから今回、「いつもより短め」を注文し、後ろとサイドを刈り上げてもらい、全体的に相当短くした結果が「どうしたんですか」である。2段階ぐらい早まったか。説明するのが面倒くさかったから「寝て起きたらこうなってた」と答えたら余計に笑われてしまった。

 

 

 

▼以前にお世話になっていた会長のところへ年末のご挨拶。会長は毎年、自社の従業員に自分の年賀状の印刷を頼んでいた。会長は80歳を超えているので実務からは引退しており、具体的な仕事はしていない。給料ももらっていない。ただ、趣味で出社しているだけ。私が勤めていたときから、そうだったけど。だから会長が出す年賀状は私用ということになる。今回も従業員に頼んだところ、それは公私混同ではないかと指摘されたという。確かに。それに従業員からしてみれば、年末の忙しいときに私用の年賀状などやっている暇はないということかもしれない。そうなんだよ、忙しいときに頼んでくるんだよ、あの人。

 

思えば会長はずっと公私混同できた人だった。私も会長の携帯電話を契約したり、頻繁に私物の買い物の用事を言いつけられたりした。あんまり嫌でもなかったですけどね。公然と仕事をサボれるという。この意識の低さよ。ただ、会長は悪い所ばかりでもなく、落ち込んでいる従業員がいれば励まして話を聞いてやったり、従業員の家族が亡くなれば元気づけるために美味しい物を贈ってくれ、声をかけてくれもした。従業員にはよく差し入れをくれたし、食事にも連れて行ってくれた。あまり仕事ができない従業員がいれば、私を呼び出して「あの子は少し要領が悪いから、おまえが手伝ってやるんだ。助け合っていかないとな」と言われた。

 

私が直接、会長に助けられた覚えはないものの、私が困っているとき、同僚や上司はよく助けてくれた。それも裏で会長が同じようなことを同僚や上司に言っていたのかもしれない。そういった社風には会長の人柄の影響が大きかったように思う。会長は無茶を言う人で、納得のいかない理由で叱られもしたし、私も言い返してケンカになったりもした。でも、一番かわいがってもらったのも私かもしれない。いろいろ問題はあるものの、いい人だったなあ。過去形にしてみたが生きている。困るぐらい元気。

 

結局、「暇なので」ということで年賀状の印刷を引き受けてしまった。会長が現役だった昭和の頃の従業員と役員との関係は、もうないかもしれない。会長はしばしば「社員は家族のようなものだ」と言っていたが、今の社員はそうは思っていないだろう。それを会長に理解しろというのは、やや酷に思える。好むと好まざると、確実に世の風潮は変わっていく。ただ、私はもう少しだけ会長の昭和的な公私混同に付き合ってみようかとも。介護。

 

 

 

▼『THE MANZAI 2019』。スピードワゴンウーマンラッシュアワーが特に面白かった。ビートたけしが完全におじいちゃんになっていた。時の流れの速さよ。

 

スピードワゴンは新人でもないのに唐突に変わったというか、あんなに面白かったっけ、と驚きました。人はいくつになっても変わるのだな。