玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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最近の若者

▼炎の幼稚園児そうちゃんが来る。体が大きくなった。もうすぐ小学生なのだろうか。

 

仮面ライダーの変身ポーズのように体の前で大きく手を回転させながら「かんきょ~! はかい! こうせーん!」と必殺技をやるのが最近のお気に入りの様子。なにそれ。同級生にはまったくうけないものの、幼稚園の先生方にはうけているらしい。本人いわく「子供にはわからないギャグ」とのこと。まさに。どこを目指しているのか。

 

 

 

▼1人いたら30人いると思え、それが親戚だ。ということで文化の日には親戚がやってきた。休みの日ぐらい、各自、家でのんびりしていたらよかろうに。いや、来たら来たでね、まあ、ありがたいのですけども。

 

100円で買ったズボン、抹茶のように泡立った緑が美しいスムージー(激マズ)、カブとリンゴのサラダ(マヨネーズ、ヨーグルト和え)、なんだかよくわからないお菓子、野菜各種などなどいただく。年寄りが集まるととにかく健康、病気、料理の話しか出ないのだった。みなどうか死ぬまでお元気で。

 

 

 

東京五輪関係の話題が多いので五輪の書を読みだした。岩波書店の本で、今から34年前、1985年発行のもので少々古いが関係ない。なにせ宮本武蔵五輪書を書いたのは寛永二十年(1643年)なので34年など誤差である。漢字仮名混じりの書き下し文になっているので読みやすい。

 

まだ読み始めたばかりですが、意外にもわかりやすい。武蔵は建築にも詳しかったようで大工の統領(棟梁を昔はこう書いたらしい)と武家の統領を比較して心得を説いている。適材適所という話ですが、木配りという言葉をつかっている。まっすぐで節もないのを表の柱にし、少し節はあっても強いものを裏の柱、弱くても見栄えのよいものを敷居・鴨居・戸障子に使うなどと細かく書いている。気配りという言葉は、元は武蔵が書いたように木配りから来ているのかもしれない。

 

他にも「最近の武家は、いささか常の用意、日常の心がけに欠けるのではないか」と「最近の若者は」的なことを言っているのも面白い。古くはプラトンもこれに似たことを言っている。言いたくなるのだな、人は。ある程度、完成した人からみれば、若者というのは当然ながら未熟に思え、つい「最近の若者は」となってしまうのだろう。

 

若者というのはだいたいがハロウィンの日に渋谷で軽トラックをひっくり返したりするものである。みんな軽トラックをひっくり返してきたが、歳をとったときにそんなことはきれいさっぱり忘れてしまって「最近の若者は」と言い出しているようにも思える。たいてい、若者はバカなことをやるものだから仕方ない面もある。しかし、現代は悪事の記録が残る時代。やったことが何十年経ってもネット上から消えず、掘り起こされもする。最近の若者は大変な時代に生きているのかも、などと思ってしまう。

 

 

▼ハロウィンといえば社員Yさんの娘さんが会社に遊びに来た。あれか、トリックオアトリートか。お菓子くれないといたずらするぞか。ハロウィンの何が気に入らないかといえば、脅迫をして菓子をせびろうという精神の卑しさである。お菓子が欲しいのなら、お菓子をくださいと言えばいいし、いたずらをしたければ落書きでも放火でもすればいい。潔さに欠ける。お菓子をくれなければというですね、この脅迫‥‥脅迫? それほどおおげさな話? 何か病んでいるのか。とにかく条件を付けてくるのが嫌だった。

 

Yさんの娘さんは小学校低学年で魔女のような扮装をしてきた。緊張した様子で社内に入ると、箒をぎゅっと胸に抱きしめたままペコリと一礼した。みな、彼女のところに集まってワイワイやっている。しばらくしてこちらの島に、緊張した面持ちでやってきた。「お? お菓子か? お菓子だな?」と声を掛けるとコクンとうなづく。

 

彼女は手に持っていた鞄から小分けにされたお菓子を出し、「休憩のときにどうぞ。お仕事がんばってください」と渡してくれた。隣席のTさんも同じようにお菓子を受け取った。こちらが上げると思っていたのに逆になったのでびっくりする。いやもう、なんですか、かわいいのなんのって。Tさんとコンビニまでお菓子を買いに行って「どれがいい? どれ食べる?」と押し付け、「お菓子食べると晩御飯食べないから、お母さんに駄目って言われてて‥‥」などと渋る彼女を「大丈夫だよお。ここで食べちゃいなよお」「美味しい? 美味しい?」などと、美味しいのカツアゲをしたりした。楽し。

 

「誘拐犯の心境、わかっちゃったねえ」と完全にアウトなことを言ってしまった。ハロウィン、悪くない。