玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

このブログの内容はすべてフィクションです

カールツァイス

▼「どうせ僕なんか」が口癖の卑屈くん。珍しくご機嫌。「これ見てくださいよ」と言うので、また芸能ゴシップか、SNSで知り合いが香ばしい発言をしているとか、そんなとこかと思った。彼が取り出したのはケース入りの双眼鏡。かなり重みがあり、手に取った感触も高級感を感じさせる。画像はシャープでとてもよく見える。「カールツァイスなんですよ、ふっふっふ」と自慢げに笑う。

 

双眼鏡のことはわからないものの、カールツァイスという名前だけは知っている。日露戦争当時、海軍を指揮した東郷平八郎が持っていたドイツ製の双眼鏡がカールツァイスだった。当時、カールツァイスなどは海軍で持っている人がほとんどなく、軍人がかわるがわる覗かせてほしいと頼みに来たとか。海軍軍人、憧れの双眼鏡だったのだ。司馬遼太郎の『坂の上の雲』に、カールツァイスの双眼鏡が出てきた。

 

値段を訊ねると10万円というから驚く。お高いのね。そんな卑屈君の趣味といえば、家の前の道に駐車して仕事をさぼっている営業車の社名とナンバーを記録し、会社に通報すること。心に闇のある人間しかできない趣味。彼が休みだった水曜日、さっそく自慢のカールツァイスが威力を発揮したという。世界最高の双眼鏡が、サボっている営業車の通報という超絶暗い趣味に使われるとは。

 

カールツァイスが泣いている。

 

 

 

▼夕方、突然の雷雨。今年初めての蝉の声を聞く。

 

参院選の投票。自分の望み通りの政策など一つもないわけで、そんなものを待っていたら一生投票できない。消去法で少なくともこれだけは、という妥協で投票するしかない。投票所に行くのも面倒だし、どこか好きな政党があるわけでもなく、行きたくないったらありゃしないのだけど、まあ仕方なくという。ただ、選挙権が当たり前にあるという世界が、実は当たり前ではなくて、昔の人たちが戦った結果、選挙権を勝ち取ったという歴史もある。

 

 

映画『未来を花束にして』とか。こういうものを観ると、やはり選挙に行くかなあ、でも、お布団が恋しいなあ。などと。

 

 

 

▼Amazonプライムのドラマ「ボーイズ」が面白そう。まだレビューが一件もなく、どんなものかはわからないのですが。表では華々しい活躍をするヒーローたち、だが彼らは裏ではかなりひどいこともやっている。ヒーローが起こす事故に巻き込まれ、恋人を失った主人公は、事故を隠蔽しようとするヒーロー会社の姿勢に強い反感を持つ。『ウォッチメン』などと同じようにヒーローものの変化球作品なのかな。まだ1話を視聴しただけですが、面白くなりそう。