玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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日は、また昇る。

▼不要な物の整理。母のノートが出てきた。15年ぐらい前のものだろうか、思い立って英語の勉強を始めたようなのだ。単語のスペルをひたすら書き綴っている。「a」から始まり、3日目ぐらいまでがんばった様子。2ページ目の「acid」(酸)で終わっていた。はや。acまでしかがんばれなかった。この根気の無さ。血を感じる。「acid」って、そんなに使いどころがないような気もする。

 

 

 

▼スーパーで買い物。小さな男の子が母親と買い物をしている。「これはじぃじの分、これはばぁばの分」と言いながら買い物かごにお菓子を入れていく。明らかに自分の好きな菓子だろう。狡猾なお子。入れたそばから母親が棚に菓子を戻していた。

 

 

 

▼先日、プロレスラーの長州力選手が引退。自伝でも読もうかなと思っていましたが、なぜかスタン・ハンセンの自伝を手に取っていた。ハンセンと長州はあまり交わるところがなかったものの、ハンセンの必殺技ウェスタン・ラリアットを参考にして長州のリキラリアットは完成している。ということで、まあいいじゃないのとハンセンの自伝『日は、また昇る。』を読んだ。

 

 

スタン・ハンセンというととにかくラリアットが強烈な印象。今では多くのレスラーが使うラリアットですがハンセンが生みの親だったんですね。それと気性の粗さがすさまじい。自伝もさぞ豪快なエピソードに溢れているかと思いきや、まったくそんな話はないのだ。プロレスを完全にビジネスと捉えている。冷静に自己も他者も分析している。また敬虔なクリスチャンで「自分がハッピーになれないのなら、いっそ他人をハッピーにすることを考えたほうがいい。自分で笑うことができないならば他人を笑わせてみることだ」とか「自分がケガをしたとき、ケガを負わせた者を許す心を忘れるな」とか、教育についても子供が間違った選択をしても、それは彼らの人生なのだから自分は見守るだけだなど、実に立派なのだ。ロープを持って、客だろうがなんだろうが誰彼かまわず殴りつけてた人が言うこととは思えない。

 

滅茶苦茶なエピソードが飛び出すものと思っていたから面食らってしまった。とても頭が良くて誠実な人なんですよね。無駄遣いをせず、現役のときから引退後の人生設計もきちんと考えている。誠実で人を立てることを大事にする。こういうギャップも面白いですね。

 

スティーブ・ウィリアムス、テリー・ゴディ、ブルーザー・ブロディ、ジャンボ鶴田、ジャイアント馬場などの思い出話も楽しい。みな鬼籍に入ってしまった。巻末には天龍との対談が掲載されており、お互いに家族のように信頼し合っている様子がうかがえる。期待したものとはまるで違った本でしたが、これはこれでとてもいい本だと思います。キリスト教とプロレスは矛盾しないのか。

 

 

 

▼映画の感想『ザ・ナイト・オブ』を書きました。一つの殺人事件を丹念に追ったドラマ。話が壮大になりがちなアメリカのドラマでは異色かも。地味ながらいい作品。猫かわいい。

 

あっという間に7月。