玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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納骨、墓参

▼包丁を持って逃走していた容疑者逮捕のニュースを見る(神奈川県横須賀市)。逃亡犯の38歳の男は、友人たちの協力で神奈川県内を逃走していたという。ふうむ。いろいろ感心。友人たちも有罪になるのによく助けるなあ。武勇伝的なエピソードが欲しいのだろうか。一緒に悪いことやったよね、アイツを裏切らなかった俺というような。

 

一緒に仕事を請けているN氏に、私が逃げたら助けてくれるか確認したところ「は? 即通報」とのことだった。そんな薄情なことでどうする。

 

友人A子に確認したところ「ハハハ。逃げるって無理無理。だいたい、どうやって生活していくわけ?」と現実的。アホか。逃げ切れる逃げ切れないなど問題ではない。逃走そのものにロマンがあるじゃんかあ! では、どういった条件なら助けてくれるのだろう。映画『逃亡者』(ハリソン・フォード主演)のように私が無罪だとしたらどうだ。だが、無罪でも「通報する」という。え、無罪なのに? 無罪ですのに? 鬼しかいないのか、私の周りは。

 

無罪かつ、逃亡者が私ではなくハリソン・フォードだったときのみ助けるという。条件が厳しすぎる。自首しよ。

 

 

 

▼伯母の納骨。叔父の車で埼玉県日高市へ。道中、女影(おなかげ)という変わった名の土地を通り過ぎる。「女影とは何かわけがありそうな名前」と、叔父と笑い合う。帰って由来を調べてみると、昔、女が池に身投げをし、それ以来、地元の人間が池に女の影を見かけることがあったことから女影という名が付いたという。うーむ、意外と普通。もっとこうめくるめく団地妻、昼下がりの情事的展開があるのかと思っていたが特になかった。いかがわしい展開にならなかった。

 

日高市は山に囲まれている。遠くの山々に白い霧が立ち込めていた。天気のいい日などは霧が山の間を川のように流れる様子が見られるという。道端の農家には見事なビワの木。「1個10円 拾いほうだい」と看板がかけられた木の根元には、誰も取る人がいないのか、大量のビワが落ちていた。

 

山の中腹にある大きな霊園に到着。事務所で納骨手続き。墓地に遺骨を納めるには埋葬許可証と、この霊園が発行する墓地の使用許可書が必要だという。埋葬許可証はあるものの叔父は「墓地の使用許可書なんて持ってない」と言い出す。オイオイ。車で1時間半もかけてやってきて納骨できないとは。叔父に「あなたはいつもそうなんだから!」と怒り出す叔母。いいぞお、叔母ちゃん言ってやれー。だが、霊園に必要書類を問い合わせる電話を掛けたのは叔母だったことがわかる。攻守が逆転し、叔母は「そんな書類必要って言ってなかった」と開き直る。赤勝て白勝てどっちもがんばれの心境。

 

墓地の使用許可書を再発行してもらうのに1万円もかかる。謎の高額費用。私立の霊園なので仕方ないのかな。しかもその日のうちに印鑑証明やら何やら持ってこないといけない。慌ただしく骨だけは入れさせてもらい、必要書類を取りに戻ることに。骨壺の中の伯母も呆れているだろう。近くの駅で降ろしてもらう。叔父夫婦は役所で印鑑証明をとってからまた1時間半かけて山の上の霊園に書類を出しに行ってくれる。ご苦労様です。ウィキペディアに偉人として登録してあげたい。

 

帰り道、ついでといっては悪いが父の墓参り。都立の大きな霊園で、霊園までの道沿いに花屋が十軒ぐらい立ち並んでいる。こんなにたくさん花屋があってどこも潰れないのが不思議。花屋の軒先には桶が何十個も掛けられている。頻繁に墓参りに行く家は、御用達の花屋がいて桶を預けてあるのだろうか。桶にはそれぞれ名前と家紋が入っている。バーのボトルキープのようなものかな。いくらぐらい払うと桶キープできるのだろうか。

 

父の遺骨は共同墓地に納められている。共同墓地は古墳のような作りになっている。古墳は二つあるのだけど、さて久しぶりに来たものだからどちらの古墳に納められていたか忘れてしまった。とりあえず両方拝む。親子ともいいかげんな人間なので、父も今更呆れもしないだろう。青紫のアジサイが美しく咲いていた。