玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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壊れる

▼戸棚の蝶番(ちょうつがい)が壊れ、温水洗浄便座が壊れ、今度は風呂の栓をとめるチェーンが切れた。呪われている。生命にまったくかかわらない地味な呪い。

 

お祓いにいったほうがいいよ、と言われる。お、お祓いて。神様も「戸棚が壊れた」とか「便座が壊れた」など、そんなどうしようもない依頼に対応するのだろうか。私なら、そんなこと頼まれても‥‥と思いますけど。神様も、風呂のチェーンが切れないようにするより他にやることがありそう。戦争をなくすとか。いきなり大きいところにきましたね。その次に風呂のチェーンが切れないようにしていただければと思います。

 

代わりのチェーンを買ってきて交換作業。替えのチェーンを付けようと四苦八苦していると、手が滑ってチェーンが風呂と壁のすきまに落ちてしまった。お風呂の外側を解体してから、落ちていたチェーンを回収。ずいぶん大がかりな仕事になってしまった。これもお祓いをしなかったため。地味な呪いを受け続ける。べつにいいけども。

 

 

 

▼隣の部署のH君がかなり明るい茶髪に染めてきた。彼は内勤だし、特に服装に規定があるわけではないのでいいのだろう。似合っていてサッカーの本田選手みたいだった。「本田選手に似てるよね」と言ったら「え? 誰がケースケ・ホンダに似ていると? ちょっともう一回言ってもらっていいですか? 誰に似ているって言いました?」「うるさいな、おまえ」。めんどくさい人だった。顔がハーフっぽいからか金髪がよく似合う。

 

しばらくしてB君も髪を染めてきた。しかし、H君のようにさまになっておらず、深夜のコンビニ前にたむろするヤンキーになってしまった。役員から「外からお客さんが来たときイメージが悪い」と指摘があり、B君に注意をするという話になった。しかしですよ、これはねえ、H君にも注意をすべきなのか。二人とも似たような色合いなのだけどイメージはだいぶ違う。H君は良くてB君は駄目というのは容姿による差別にも思えるけど。

 

こういった仕事とは関係ない問題が実は一番難しいような気がする。下手するとこじれそうだし。一番問題なのはきちんとしたルールや基準がないことかもしれない。どうしたらいいのかなあ。私が注意するわけではないのだけど、何が適切な答えなのか考えている。

 

 

 

▼映画の感想『捕われた女』『さよなら、人類』を書きました。『捕われた女』は驚愕のラストにのけぞりました。本当に。これは新しいというかなんというか。ろくでもない新しさ。『さよなら、人類』は北欧のショートコント。淡々とした雰囲気が良かったです。