玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

このブログの内容はすべてフィクションです

吉備真備

▼昨日のBSプレミアム「英雄たちの選択」は奈良時代の学者・公卿の吉備真備(きびのまきび)。いよいよ取りあげる人物も尽きてきて、マイナーなところにきた。嬉し。日本史の授業では唐に渡ったことと恵美押勝(藤原仲麻呂)の乱を鎮圧したぐらいしか触れられなかった気がする。

 

 

秀才だったという吉備真備の逸話が面白かった。唐に渡った真備は、ある日、碁の名人と勝負することになる。碁では名人にかなうはずもないのだが、名人の碁石を一つ飲み込むというインチキで勝利する。納得のいかない名人は真備の服をすべて脱がせ、裸にして調べるが見つからない。さらには下剤まで飲ませ、便の中まで調べるがやはり碁石は出てこない。真備は超能力によって碁を体内に留めて隠したという。

 

偉人に逸話が付き物だが、この微妙な話はどうなんだ。碁を一つ飲み込んでズルをした真備と、納得がいかないから裸にしてさらには下剤まで飲ませて便を調べるという名人の常軌を逸した執拗さ。そして碁を体内に留めるという変な超能力。あらゆる要素がポンコツですばらしい。そんなすごい超能力があるなら普通に勝てば、と思うのだけど。このねえ、登場人物が全員損をする逸話が最高ですねえ。みんなバカに見えるもの。こういう話を集めたい。

 

変な話はさておき、真備は藤原仲麻呂によって各地へ左遷(左遷かどうかは議論がある)される。で、出世しだすのが70歳(没年は80歳)を越えてからなんですね。ものすごいなあ。奈良時代の平均寿命は「寿命図鑑」によると28~33歳ぐらいだったようです。この本がどれぐらい正確かはわからないけど。

 

面白かったのが磯田先生が語った真備のエピソード。貨幣を貯めておく蔵が火事で焼けたのだけど、代わりの蔵をあらかじめ私費で作っていたという話。恐ろしい人だ。そのおかげで政府は徴収した税を、真備が用意していた蔵に納めることができたという。真備が唐に留学したとき、向こうで同じような事件があったのかもしれない。だけど、真備の準備の良さは蔵が火事で焼失したから明らかになったわけで、蔵以外にも多くのことを密かに準備していたのだろう。なんて用心深い人だと思う。

 

西暦764年の初め、真備は致仕(役職を辞める)を願い出ている。致仕を願い出たから野心がないと思われたのか、真備は地方から呼び戻され都で造東大寺官に任ぜられる。寺でも作ってなさいという役職。だが、この年の9月に藤原仲麻呂が乱を起こし、孝謙天皇は真備を召して仲麻呂討伐を命じる。真備は見事に乱を平定する。当時、真備が都にいたことは僥倖に思えるが、真備の用心深さを考えると、仲麻呂の反乱を予見してあらかじめ備えていたのではないかと思ってしまう。底が見えない人。

 

 

 

▼先日は、書いた小説を読んでほしいなどと大それたことを書いたものだと思う。恥ずかし。「ここの意味がわからん」とか「漢字が違う」とか、それぐらい教えてもらえればと思っただけなのです。しかしですよ、「これ全然面白くないなあ」というか、もっと言うと「クソつまんねぇ」と思われても、読んだ方はなかなかそう言えないのではないか。みなさん遠慮深いので。それに私の性格からして、そんなこと言われたら放火しに行きそうじゃんかあ! 行かないけど。寒いから。寒くない場合、行く。

 

放火される危険を背負ってまで読もうという勇者は現れないのか。

 

 

 

▼映画の感想「ブラッド・ファーザー」を書きました。ちょっと私生活が大変だったメル・ギブソン。立ち直ってきたのでしょうか。主人公がメル・ギブソンとかぶるような作品。映画としてより、メル・ギブソンの人としての面白さが見えるような作品でした。