玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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樹木希林さん

▼広島カープ三連覇。中日は、黄金時代を支えた岩瀬、荒木、浅尾の引退が決定。一つの時代が終わる。さみし。暗黒時代も本格化であり、光明が見えない。ここんとこ毎年、テセウスの船について書いているように思う。ある船がぼろくなって、仮にすべてのパーツを取り換えたとしたら、その船ははたして同じ船といえるのかという同一性についての哲学的問題。

 

中日ドラゴンズというチームを応援していたけれど、私の好きな岩瀬、荒木、浅尾が抜けた場合、それははたして中日なのかという。中日という形は同じでも魂的なものが異なるのでは。そんなこと毎年言いつつも、毎年応援してしまう。今年こそは、今年こそはやってくれる。きっと、あの人は働きに出てくれる。毎日、私から金をせびりとってパチンコに通う毎日だけど、きっと明日こそはハローワークに行ってくれるはず。ヒモを養う水商売の女の心境で中日を応援しておる。やめればいいと思います。

 

 

 

▼先日お亡くなりになった樹木希林さんの密着ドキュメンタリー(NHK)を観る。樹木希林というと歯に衣着せず物を言う、サッパリした楽しいおばちゃんという印象。物を大切にし、飾らない性格で、それでいて私服はとてもおしゃれだった。自分で車を運転して密着ディレクターを送り迎えする気さくさも持ち合わせている。ドキュメンタリーは面白いものに仕上がっていた。

 

彼女は癌にかかっており余命もわずか。だが、貴重な残り時間を使った取材も、これといった肝になる部分があるわけではなく、時間だけが無為に流れていった。本来ならば、焦らなくてはならないのはディレクターのほうだが、番組を見ると樹木希林のほうが焦っている。こんなのもので番組になるのかと心配している。

 

密着していれば自然と面白いものが撮れるはず、ディレクターにはそういった浅はかな考えがあったのかもしれない。その部分を樹木希林に鋭く指摘されてしまう。考えてないのだ。あなたは結局、何を撮りたいの? と問われているようで、ディレクターははっきりと答えられない。考えてない人に対しての厳しさを感じる。

 

反面、きちんと考えている人に対しては、彼女は責任感を持って応えるような優しさをみせる。ああ、こういう人だったんだなと、人となりが伝わってきた。是枝監督も映画「万引き家族」の設定について問い詰められていました。ディレクターは、やや無様な面をさらけ出すことになったが、無様だったからこそ、樹木希林の人柄が垣間見えたわけだし、少ない残り時間を使ってくれたありがたいドキュメンタリーにもなった。優しいけれど怖い人。

 

「あなた、このままでいいの?」とでもいうような問いは、ディレクターだけに向けられた問いではなく、私にも突き刺さるものがあった。四十も超えれば、日常をなんとなくやり過ごしてしまうずるい生き方があって、今更誰も私を責めはしないのだけど、そういった怠惰さを見逃さずに指摘されたような気がした。

 

彼女が最後にディレクターに言った「終電なくなるわよ」というさりげない気遣い。ぶっきらぼうなようでいて、常に人を気遣う細やかな心配りができる人だったのだろう。面白い人がまた一人逝ってしまった。

 

 

 

▼そんな樹木希林さんの問いを受けつつ、ゲームをやる。殺人オニゴッコ「Dead by Daylight」である。ゲームの感想に書きました。わしゃ、ダメなやつじゃあ! ダメなやつなんじゃあ! また遊んでしまったあああ。明日、真人間になるから。もう、人々をフックに吊るして処刑したりしないから。しないから‥‥、たぶん。

 

 

 

▼映画の感想「メガロボクス」を書きました。「あしたのジョー」の連載開始から50年を経て企画された作品。