玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

このブログの内容はすべてフィクションです

メルヘン

▼友人夫婦の家にお邪魔。友人夫婦の子シワちゃん(4歳)と話す。

 

シワちゃんは童話「うさぎとかめ」を私のところに持ってきて差し出すと「読んでくれますか?」と言う。あんた、大人みたいな話し方すんのね。リクエストに応えて「うさぎとかめ」を読む。イソップ童話や童謡にもなっている有名な話。歩みの遅さを馬鹿にされた亀が兎に競走を挑む。兎はどんどん亀を引き離し、油断した兎は昼寝をするが、その間に亀が勝ってしまう。

 

子供の頃はなんの疑問も持たなかったが、ずいぶんと不思議な話。油断大敵という教訓なのかもしれないが、そもそもなぜ亀は兎に競走を挑んだのだろう。兎が寝る保証などどこにもなかったはず。亀の勝ちというのは計算されたものではなく単なる僥倖にすぎないのだ。もし、兎が勤勉だったなら大差で亀は負けただろう。そのときの教訓は何か。才能がある者にはどうあがいてもかなわない、ということになりはしないか。それはそれでシビアな話。果たして亀は兎に戦いを挑むべきだったのか。

 

小学生の頃の足の速さは、リレーなどで華やかな活躍の場があるものの歳をとるにつれてどうでも良くなっていく。友人は中学時代、足が速かった(リレーの選手)という理由で女子から告白されたが、社会人になって足が速くても女子から告白されないのだ。足の速さなど、社会人になってからはコンビニ強盗をするときにしか役に立たない。極端だなオイ。

 

そもそも、足の速さなど数ある能力の一つにすぎない。遅くてもいいのだ。亀は競走ではなく得意分野で兎に挑むべきだったのではないか。などと、シワちゃんに言ってみるが、どうも私の言うことが今一つわからないようだったし、興味もないようなのだ。さすが4歳児、話が通じない。まだ人よりもチンパンジーに近い気がする。

 

シワちゃんは、話が通じないでガッカリしている私が不憫だと思ったのか「兎と亀、どっちが好き?」と訊いてくれた。4歳児に気をつかわれている。これもなかなか難しい質問。飼うなら兎、食べるなら亀、つまり用途による。だが兎のフワフワ感は捨てがたい。「兎。フワフワだから」と答えた。「シワは亀さんだよ。竜宮城に連れてってくれるから~」とはしゃいでいた。メルヘン。ピュアさにクラクラきた。

 

こんな子もいつかは「法人登記して2年以内は消費税免除になるから、3年目になるときに新しい会社を起こして、そちらに事業を移管して消費税免除をまた受けようね」など、脱税まがいのことを提案してくるのである。そうに決まっている。人間は醜い。

 

何かありましたか。ありましたね。

 

 

 

▼映画の感想「嘆きのピエタ」を書きました。大人のための童話のような作品。親の愛を知らない借金取りが、愛情を知ったゆえに苦しんでいく。愛を知らなければ、ある意味、心安らかに暮らせていたのかもしれない。面白かったです。