玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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ペッパー君

▼「ペッパー君、クビになる」(DIGITAL TRENDS)の記事を読む。

 

 

ペッパー君は、ソフトバンクの携帯ショップにいる不気味なやつである。スコットランドの食料雑貨店に貸し出され、働いていたものの、働きぶりが良くなかったのかオーナーにクビにされてしまう。でも、それも仕方ないことかもしれない。記事を見ると、客が「牛乳はどこ?」と訊くと「冷蔵のコーナーにあります」と答える。「ワインはどこ?」と訊くと「お酒のコーナーにあります」と答える。売り場までの案内はしない。訊かれたことを答えましたが何か? という態度が清々しい。ダメ店員だけど。そりゃ、クビになるわ。

 

でもよくよく考えてみると、ロボットが駄目というより、人間の言葉の解釈の優秀さに気づく。「牛乳はどこ?」と人間の店員に尋ねたら「こちらです」と売り場に案内してくれるだろう。店員が(お客さんは牛乳が置いてある場所がわからなくて質問しているのだから、売り場まで案内しなければ)と考えているからなんですよね。ペッパー君は「牛乳はどこ?」って訊かれたから、素直に「冷蔵のセクションにあります」と答えただけなのだ。間違っていない。だって案内しろなんて言われてないのだ。ロボットに尋ねるのであれば「牛乳が置いてある場所まで案内して」と言うべきなのだろう。お客は人間の店員に売り場までの案内を望むけど「牛乳売り場まで案内して」とは言わないんですよね。それは図々しすぎると思うのかな。行間を読むというか、言葉の裏の意味をとるということが自然にできないと、人とのコミュニケーションは難しそう。

 

状況によってはペッパー君の対応だって正しいことがある。例えば、家庭にペッパー君がいたとして「牛乳はどこ?」と訊かれたら「冷蔵庫にあります」は正解だろう。上の食料雑貨店で求められたように「ご案内します」と、冷蔵庫まで案内しだしたら、それは違うということになる。状況判断も人は当たり前にしている。以前、AIに東大を受験させるプロジェクトがあったが結局、中止されてしまった。あれも国語の点数が上がらないというのが理由だった。よく、AIに仕事を奪われるなんてことを言いますが、日本語的能力を問われる仕事ならばまだまだ安泰なのかもしれない。とはいえ、技術の進歩は早いからわかんないけども。

 

そういえば、以前、N氏とお好み焼きを作ったことがある。私がトイレに行っている間、N氏に「フライパンを見てて」と頼んだ。戻ってみるとN氏は「焦げそうだけど、これ見てるだけでいいの? ひっくり返さなくていいの?」と言っていた。普通、言わなくてもわかるだろうよ。焦げるのを眺めててどうする。今、考えると奴はペッパー君なのかもしれない。

 

「お客さん、怒ってるけど、これ俺が悪いのかなー?」などと言っているのを見ると、やはりロボなのではないかと思う。なまじ人間ぽいからだまされるところだった。危ない危ない。ポンコツのAIと一緒に仕事をしている。

 

 

 

▼映画の感想「ゴースト・イン・ザ・シェル」を書きました。アニメの「攻殻機動隊」をハリウッドで実写化したものです。アニメへの思い入れが強かったせいか、やや歪んだ感想になってしまいました。両方素直に楽しめればいいのになあ。