玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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歯の治療

▼今日も歯医者。なるべく毎日通って早く治してもらおうと思っている。泥棒顔の先生は今日も一方的によく喋る。先生のご家族、ご自宅から歯科医院までの交通手段、今後の歯科医院の展望などを聞く。なんだこの情報。先生のファンサイトでも作ればいいのか。

 

私の気分をほぐすためにいろいろ話をしてくれているのかもしれない。だとすればありがたいこと。大人になってからは歯石取りや検診のために歯医者へ行くことが多かった。しかし、今回は久しぶりの治療である。まず、奥歯の虫歯の治療をしてから歯が欠けた奥歯の型どりをすると説明を聞く。

 

石橋蓮司さんが「アウトレイジ」でやられていたが、治療用の椅子に横たわって口を開けばまな板の上の鯉。精神的にはこの状態である。ここから蓮司はビートたけしに嫌というほど虐められるのだった‥‥。

 

 

ずいぶんとご無沙汰していた嫌な緊張感。前回、患部に薬を塗ってセメントで蓋をしており、そのセメントを剥がしてから虫歯になっている部分を削るようなんですね。セメントがうまく剥がれないのか、ガチャガチャと器具が歯に当たってこれも痛い。どうにかこうにかセメントが外れたようで、うがいをすると血とセメントの削りカスが流れていく。

 

思ったよりもたいした痛みではない。子供の頃、歯医者は苦手だったが大人になればだいぶ違うもので余裕が出てきた。これから虫歯を削っていく。チュイーンという、歯を削る器具が出す恐ろしい音。先生は相変わらず丁寧でにこやか。「痛かったら手を挙げてくださいね~」と微笑んでいる。麻酔無しでやったのだけど、最初は良かったが削っているうちに神経に触れるのか奥歯の辺りに激痛が走る。冷や汗をかき、なんとも嫌な気分。口の中に血の味がひろがる。今、蓮司の気持ちがわかる。

 

何か言おうにも口を開けているから声が出ない。痛みで背中と掌にはべっとりと汗をかいていた。でも、大の大人がちょっとのことで「すみません。痛いです」というのも情けない。一応、堪えられるところまでは我慢したい。器具が歯を削るとき、神経に当たるのか、猛烈に痛むことがある。「はい。だいぶ削れてきましたよ~。大丈夫ですか。痛かったら手を挙げてくださいね~」と言われ、根性を試されているような気持ちに。

 

治療は長く続き30分ぐらい経ったのだろうか。左上の奥歯の中が抉り取られるような感覚だったので、思い切って手を挙げた。先生は「はい。もうちょっとなんで、がんばってやってみましょうか~」と手を止めてくれない。絶望。おまえ、なんのために手を挙げさせた。これ、コントであるやつじゃんかあ! 

 

精神的にだいぶやられた。「アウトレイジ」の石橋蓮司さんぐらいやられた感がある。今日は泣きながらテディベアを抱きしめて眠る。大人は信用できない。

 

 

先日、これを機に悪いところは全部治すと偉そうなことを書いたが、まあどうなんでしょうか。「積極的に治療する」から「方針そのものに変わりはないものの、前向きに検討させていただく」ぐらいに変わっている。できればこのまま逃亡したい。他のアマルガムを詰めた箇所についてですが、アマルガムを摘出して全部他の材料に入れ替えるというのもねえ、大変なのかなあ。またあれやこれやあって、結局チュイーンなんでしょ。チュイーン怖いしなあ。手を挙げても止めてくれないしさあ!

 

今後は歯磨きをがんばりたい。幼稚園児と同じ目標で生きていく。13日の金曜日にふさわしい内容になってしまった。