玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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刑務所わず。塀の中では言えないホントの話(堀江貴文 著)

▼ホリエモンこと堀江貴文さんの服役生活を描いた本です。堀江さんというと歯に衣着せぬ発言や、始終ネットでケンカしているイメージがあり、あまりいい印象がなくて著書を読んだこともありませんでした。前にいたITベンチャーの会社では、堀江さんと仕事をした方たちも何人かおり、その人たちが堀江さんのことをあまり良く言ってなかったということもある。

 

ITベンチャーというのは得体の知れない山師のような人もけっこういるわけで、そういう人が成功者を悪く言うときは嫉妬からという部分が多分にある。自分は成功してないのに、なぜ堀江がというわけなのだ。わたしは堀江さんの悪い噂を多く吹き込まれてしまったため、著書を読んで自分で判断しようとはしなかった。間違っていた。

 

で、この本なのですが面白かったです。刑務所内の閉ざされた生活は花輪和一さんの「刑務所の中」に詳しいですが、あの本よりも華やかというのも変なのですが、悲愴感や哀愁がなく語られている。これは堀江さんの前向きでエネルギーに溢れた性格によるものかもしれません。

 

刑務所のおやつが二つから選択制になっていて選べるようになっていたり(充実しすぎ?)、Hな本(痴漢、強姦などの犯罪を除く)の差し入れがOKだったり、所内の昇格により面会回数が増える仕組み、刑務所内にあるイジメなど、刑務所マメ知識が面白い。服役した時に役に立ちそう。

 

それと興味深いのが受刑者についての観察で「刑務所にいる人たちの多くは、別に極悪非道でも奇人変人でもなくて、普通の人たちだった」という部分。つまりそれは、わたしたちも何かのきっかけで罪を犯して服役する可能性もあるということを意味している。いやいや、犯罪者というのは特別に悪い奴で、まさか自分はそんなことはないと思うかもしれない。でも、万引き3回で実刑とか、そういう例を読むと、もう本当にどうなるかわからないと思いました。2回までにしとこ。

 

もちろん、倫理観が欠落した人もいる。女子高生を田んぼに落としてレイプしてなんの良心の呵責も感じていない常習犯などもいる。その男は所内の仕事も良くできて、対人スキルが高く、誰とでもうまくやれるんですよね。結婚もしている。社会で普通にやっていけるのに倫理観がまったくないのは恐ろしい。こういった人はひょっとして病院の範疇なのではないかと思うのだけど。

 

刑務作業についてもいろいろ考えさせられる。ちょっと単純作業ばかりやりすぎに思える。パソコンも導入しておらず計算業務は所内の古株の受刑者の担当になっているらしい。受刑者にパソコンなどを覚えさせてある程度高度な職業訓練ができれば、再犯率の低下に繋がるように思う。本の中で、刑務官が「再犯率は5割」と言っているがこれが本当だとすると高すぎて驚く。受刑者の職業訓練や福利厚生が充実しすぎると、刑罰としての服役という意味がなくなるという意見は当然出てくるのだろうけども。確かにそこは難しいところだけど、いつかは社会に戻ってきて隣で生活をしていくわけですからねえ。

 

堀江さんに対するイメージも変わりました。淋しがり屋の気のいい人というか。今までは冷たくて金の亡者という感じだったけど。ただし、バカが嫌いでバカに対して容赦ない印象は変わらなかった。

 

2時間あればさっと読める内容になっています。刑務所ものというのは外れが少ないですね。面白かったです。