玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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YouTuber

▼今日も暑かった。毎回、暑いしか書いてない日記である。

 

一緒に仕事を請けているN氏と炎天下の打ち合わせに。N氏は打ち合わせ場所に着くまで憑りつかれたように「YouTuberになりたい」と何度も繰り返す。だからといって動画を作って上げるでもない。何か準備をしているわけでもないし、世間に顔を晒すだけの根性があるわけでもない。YouTuberになりたいといってるが、本当はYouTuberになりたいのではない。ただ単にダラダラしてお金が欲しいのだ。なれるわけがない。

 

あああ! YouTuberになりたい! なにがなんでもなりたい! こんな暑い日は部屋でハーゲンダッツとか食べて「下々の方は大変ざんすね。こんな暑い日に仕事だなんて」とかいって、エアコンの効いた部屋で猫と戯れていたい。怒られない程度に、適当に世相を斬って生きていきたい。なれるわけがない。

 

 

 

▼道には蝉の死骸があった。線路沿いの長い一本道の遥か先は蜃気楼でゆらいで見えた。あまりの暑さに意識が朦朧とした。そのとき頭に浮かんだのは、俳優の宍戸錠さんが自身の飼い犬に「サダム・フセイン子」と名付けたことである。何度思い出しても笑ってしまう。これだけでたいていの怒りは許せる。

 

 

 

▼吉村萬壱さんの本を2冊読む。「臣女」と「ハリガネムシ」。最近、小説を読んでなかったのだけどこんな奇妙な作品があったとは。

 

 

みずからの不倫をきっかけに妻が巨大化していくというバカバカしくも恐ろしい話。巨大化して何もできなくなった妻のために料理や下の世話をする夫。あるときは妻が憎く、あるときは愛おしくもなる。奇妙な設定ながら主人公の思考に共感するところはあるし、また妻が巨大化した理由についても、シンプルながらああそうかと嘆息するオチがある。奇妙な話が好きな人にはお薦めです。エログロが強め。作品に複数の読み解き方を許している。優れた作品にはそんな自由さがありますね。