玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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二歳児

▼甥がやってきた。わたしの二歳の頃はどんなだったかなあ。当然ながら記憶はないのだけど。

 

言葉は単語ならば話せることもあり、二語文(お腹+空いた)はまだのようである。わたしが作ったタラコのスパゲッティは「美味しい」といって食べていた。サラダについては「まあまあ」だそうで、おまえ、まあまあっていえるんか。すごいな。おっさんみたいな子供である。

 

ときには転ぶこともあるけれど、移動は駆け足でソファにダイブするように倒れ込む。エネルギーの塊で、突然笑い出したり、奇声を上げたりする。これはですねえ、頭の良いチンパンジーのほうがちゃんとしていると思う。二歳とはこんなだったか。スナック菓子を上げたら口に合わなかったらしく、一度口に入れた物を袋の中に戻したりしていた。やりたい放題である。

 

今日は機嫌が良かったらしく、終始ニコニコしていた。今は車に夢中だそうで、家にあったラジコンやら仕事でもらったミニカーを上げてしまった。なんだろうか、あの顔を見ていたらなんでもしてやりたくなる。ちょっとおじいちゃんの気持ちがわかった。今まで、人に貢ぐ人間の気持ちがまったくわからなかったが、今ならわかるような気がする。今日のわたしなら、キャバ嬢のためにドンペリを入れられる。

 

しかし、疑うことを知らずに育っているのが恐ろしくもある。上げたお菓子はためらいなく口に放り込むし、警戒心がまるでない。大丈夫か。わたしが毒を盛ったらどうする気だ。天真爛漫で疑うことのない無垢な瞳だった。普段は猜疑心に満ちた瞳や、これ以上仕事を押し付けられないかという恐懼の瞳ばかりを見ているせいか、純粋な瞳にあてられてしまった。

 

自分が愛されているのが当然で、当然という自覚もなくて、ただただ満足して生きている。ここまで何も考えてない姿というのは、すばらしい。生まれ変わったら美人の天文学者か数学者になりたかったが二歳児というのもいい。二歳児はねえ、かなりやりたい放題である。なにせ納期やノルマがないのがいい。まだ言葉もわからぬ甥に「おまえ、今が人生のピークだからな。な! あとは落ちていくだけだぞ」と、しつこくいって聞かせた。

 

 

 

▼映画の感想「インサイダーズ/内部者たち」を書きました。暴力、騙し合い、性接待。韓国映画の魅力がたっぷり詰まった魅力的な映画でした。特に、性接待のオチンチンゴルフはたいへんよろしいんじゃないかと思います。面白かったです。